【前回記事】「「日東駒専」「産近甲龍」という括り、どう思っている? 近畿大学☓東洋大学広報対談」はこちら
箱根駅伝?大嫌いです(笑)
榊原:今日、絶対に世耕さんに聞いておきたかったことがあります。「箱根駅伝」というお正月の国民的イベントがあるわけですが、関西の方々はどんなイメージをお持ちなのでしょうか。
世耕:えっ、正月から箱根で駅伝を行ってるんですか……? いやぁ、知らんかったわぁ!
一同:(笑いが起きる)
榊原:そうきましたか(笑)。毎年、年明けに東京から箱根を目指して、各大学がたすきをつないで行う関東ローカルの駅伝大会なんですが(笑)。
世耕:ハハハ。まぁ、冗談はさておき。箱根駅伝、もちろん知っていますよ。関西でもテレビ放映していますしね。正直言いますと……「大嫌い!!」と言っておきましょうか(笑)。「おいしいコンテンツを持っていていいなぁ~」とは思います。ただ、関東では視聴率30%前後くらいと聞きますけど、関西では10%台ですからね。僕ら関西勢も箱根駅伝は意識していて、いつか対抗できるようなコンテンツを用意するくらいのチャレンジはしてみたいですね。
榊原:楽しみにしています(笑)。よく記者から「箱根駅伝で優勝すると志願者数が増えますよね?」と言われます。けれども、大学の認知度は上がりますが、残念ながら志願者数は増えません。受験生が正月の追い込みの時期に駅伝を見ているとは思えませんし、歴代の戦績と志願者数を分析・検証しても相関関係が導き出せません。志願者よりも在校生や卒業生や関係者が大いに喜ぶ。皆で盛り上がり一体感ができるだけでもインナー広報的に十分です。
世耕さんも水上競技部長でもいらっしゃいますし、スポーツと大学のブランディングについてどう思いますか。
世耕:近大は東洋大ほど強いスポーツ競技は少ないですが、我々よりももっと規模の小さい大学が知名度を高めるには箱根駅伝のようなコンテンツは重要だと思います。競技を通じて、大学名が刷り込まれていきますからね。大学におけるスポーツは「卒業生・在学生・教員が一緒に熱狂できるコンテンツ」。近大でもそのようになればと考えています。東洋大は世界的に活躍するアスリート学生も多いですよね。
榊原:今年のリオ五輪では20キロメートル競歩の松永大介君、水泳部の萩野公介君、内田美希さんが出場します。
頑張っている彼らを広報も全力で応援しますが、アスリートが強いイメージは東洋大の一面に過ぎません。大学全体のイメージを変えていくには選手の印象以上に、大学として力を入れている教育・研究のイメージ形成を頑張らなくてはいけません。
ポケモン世界大会で優勝の学生が「Kindai Picks」に登場
世耕:東洋大の入試のウェブサイトはおもしろいなと思って拝見しています。いま大学の広告や広報は「紙とネット、どちらに力を入れるか」という判断をする岐路に立たされていますよね。
榊原:確かに、受験生をターゲットにすればネット主体で10代に響くプロモーションやコンテンツづくりが必要ですし、その親世代には新聞など紙メディアの方がフィットする場合も。それぞれの「いいとこ取り」をしている過渡期だと思います。その中で気になっていたのが、近大独自のキュレーションメディア。非常におもしろいなと思って注目しています。あのサイトが誕生した経緯を知りたいです。
世耕:2015年10月からネット上での情報発信コンテンツのひとつとして「Kindai Picks」をスタートさせました。外部のニュースサイトで取り上げられた近大に関する記事はもちろん、本学からのオリジナルコンテンツも発信しています。近大の公式サイトのトップページにも記事を埋め込んでいます。
我々は年間で397本(2015年4月~2016年3月)のプレスリリースを出しているので、ネットニュースで取り上げてもらえる機会も増えています。その記事を集約しつつ、本学の隠れたニュースを発信していく取り組みです。
最近のヒット記事は「世界一を勝ち取る徹底力 -僕がポケモン世界大会で優勝できた理由-(近畿大学理工学部4年生 帆波翔馬さん)」ですね。「ポケットモンスター」シリーズにおける世界最強のポケモントレーナーを決める大会で6年ぶりに優勝した日本人が理工学部の学生だったため、取材しました。この記事、ぜひ見ていただきたいです。
榊原:いいですね(笑)。ともすると光が当たらなかったかもしれない学生の個性に注目が集まるのはおもしろい。
世耕:外部の記事の活用としては、例えば著名人の方が重い病気にかかったとき、その症例について大学教授がコメントを出すことはよくありますよね。先日も、芸人の前田健さんが虚血性心不全で亡くなった際に医学部病理学教室講師からコメントを出させていただきました。その記事も「Kindai Picks」に集約しています。
これは人の不幸を広報のネタにしているわけではなく、大学の社会的使命だと思うんです。広報としては社会に役立つ研究の成果を世の中に公表する義務があると考えています。
榊原:社会に役立つ、社会との接点をつくる。これは大学広報の使命のひとつですよね。単年度の志願者数を集める宣伝活動のような大きな動きだけではなく、地道な教授陣とのリレーションのなかで社会に貢献できることは大学という教育・研究機関の価値向上につながるはずです。すなわちそれが大学の本質理解になり、ブランド力向上へと昇華すると確信しています。
続きは、6月1日発売の『広報会議』2016年7月号をご覧ください。本誌では、以下の内容についても聞いています。
・なぜ大学に広報が必要なのか
・「日東駒専」「産近甲龍」という括り、どう思っている?
・広報で大学の価値観を変える
「広報会議」2016年7月号 巻頭特集「社会に広がるPRの力」
自治体や教育機関、そして医療法人やNGOなどの分野で活躍するPRパーソン。現場の皆さんが実感した「広報の力」に迫ります。
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「大学広報の今を語り尽くす」特別企画
- 近畿大学×東洋大学 東西のキーパーソンが初対談
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<NGO>セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
- 二度の震災で再認識した「広報」の存在意義
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<医療機関> 小倉記念病院
- 「病院が選ばれる」時代へ 地元企業や開業医と連携
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<オリンピック・パラリンピック>つくば国際スポーツアカデミー(TIAS)
- 海外メディアを取材誘致 日本の競争力をアピール
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【VOICE】女子サッカー界を牽引する「なでしこ」
- 「広報の仕事が勝負への思いを強めた」
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<自治体>石川県七尾市
- 撮影しながらマラソン走破も 年間300件もの取材の裏側
近畿大学 広報部長
世耕 石弘 氏
1969年生まれ。1992年、近畿日本鉄道に入社。以降、ホテル事業、海外派遣、広報担当を経て2007年に近畿大学に奉職。入学センター入試広報課長、同センター事務長を経て、2013年4月より広報部 部長代理、2015年4月より現職。総務部長代理、水上競技部長も兼任。
東洋大学 総務部広報課 課長
榊原 康貴 氏
1992年、東洋大学に奉職。教務、入試、専門職大学院設置、就職・キャリア支援、通信教育などを担当。2012年6月より広報課へ。学園全体の広報活動や大学ブランディングに注力。2015年3月に修了した大学院では、 学生不祥事に関わる大学の責務や危機管理について研究。日本広報学会・社会デザイン学会所属。