マーケティング投資は関係性の構築へとシフト
近年、テクノロジーの進化により、個々の顧客に適したタイミング、チャネル、デバイスで顧客の期待に応えるメッセージやコンテンツを提供するワントゥワンマーケティングを大規模、かつ同時に実行することが可能になっている。
顧客と1対1のコミュニケーションを効率的に実現しうる環境の中で、従来のマスプロモーション中心ではない新しいマーケティングが始まっている。
そこでは企業の都合ではなく、顧客を中心に、社内の複数の部門にまたがる接点を統合的にマネジメントしていくことが必要とされる。
現地でインタビューに答えた、マルケトのCMO、サンジェイ・ドラキア氏は「人は1日に3000以上のマーケティングメッセージを受け取ると言われている。たくさんのノイズを乗り越えて、どうしたら見込みや既存の顧客にリーチできるか。従来型の一つのメッセージを不特定多数の人に送る、マスコミュニケーションでは機能しない。その人が必要とするメッセージを届け、1対1の関係をつくることが大切だ。テクノロジーが顧客との個人的な関係を大きなスケールで同時に実現することを可能にしている」と語った。
主に世界の中でも米国が、マーケティングテクノロジーを活用したワントゥワンマーケティング実践の取り組みが進んでいると言われる。では、アメリカのマーケターはどのようなミッションを持って、仕事に取り組んでい
るのか。
この問いに対して、前述のサンジェイ・ドラキア氏は「マーケターは今、3つのカテゴリのミッションに同時に取
り組んでいる。1つが新しい顧客の獲得強化、2つ目が顧客との関係を深め、クロスセル、アップセルにつなげること。3つ目がアドボカシーの構築で、つまりはファンになってもらうための活動だ。マルケトは、ライフサイクルのすべてのステージにある顧客に対し、1つのプラットフォーム上で、関係性構築のための1対1のコミュニケーションを実現するものである。マルケトを使うマーケターは、この3つの目標のどこにフォーカスするか、その時々の戦略を考え、実行している」と答えた。
統一的なブランドイメージを、マスメディアを使って、多くの消費者に一斉に伝え、その露出量の多さでマインドシェアを高めるという、これまでのブランドのつくられ方が変化を始めている。
伝統的なマスマーケティングを用いた、ブランド構築は企業が伝えたいメッセージありき。しかし、今は顧客の声に耳を傾け、彼らが望む個別のメッセージを伝えなければならなくなっているのだ。
しかし、この時代の変化に対応できる人材の獲得はどの企業も課題だ。この問いに対して、サンジェイ・ドラキア氏は「これまでにないような経験をしていくのが、現代のマーケターだ。人材がいないというが、そもそも今、あなたが求める経歴を持った人材が世の中にいるのだろうか。これまでの経験や知識以上に、その人の持つ姿勢が大事」と話していた。
IoT時代に異なる進化!?マーケティングプラットフォーム
サミットで発表された、先の「PROJECT ORION」は顧客とのインタラクションが爆発的に増加する、IoT時代を見据えた対応と言えるだろう。
今回の取材ではIoT時代の変化の兆しが随所に見られた。これまでも、マーケティング、営業、カスタマーサポートなど多部門にまたがる、顧客との接点を統合し、魅力的なエクスペリエンスを形づくる方向でマーケティングは進化を続けてきた。
しかしIoT時代に生まれるであろう新たな接点、インタラクションがそこに加わった時、はたして「カスタマーエクスペリエンス」は、“マーケティング”という領域の概念で捉えられるものなのか。
企業そして経営の中に「カスタマーエクスペリエンス」や「カスタマーエンゲージメント」という、未知の領域がつくられていくのではないか。そんな印象を強く持った。
フィル・フェルナンデスCEOも我々の取材に対し「マーケティング・オートメーションという言葉は、これから2~3年で段階的に消えていくと思う。手段にフォーカスしたこの言葉では、その本質を言い表せられなくなっている。目的は顧客中心のマーケティング、さらには経営への変革を実現することだ」と語った。
デジタルテクノロジー、データの活用でいま、世界のマーケティングは大きく変わり始めている。
THE MARKETING NATION SUMMIT 2016〜マーケティングのイノベーションがここに〜
日時:2016年7月6日 10:00〜17:20
場所:グランド ハイアット東京
詳細:https://jp.marketo.com/summit-2016/