「Big Idea」から「Whole Idea」へ
当然、いわゆる広告会社としては、このCommunications領域がビジネスとして本丸であり続けるのではないかと思うのですが、最初ではなく最後に紹介したことにZasaさんのメッセージが込められている気がしました。
つまり、このCommunications領域も、従来通りの広告コミュニケーション事業ではなく、コンサルティング能力やプロダクトの開発能力を持っている上での新しいコミュニケーション事業であるという点です。
Zasa氏は、従来の広告コミュニケーションにおいては、「Big Idea」と呼ばれる企業側が定義したアイデアをコアにトップダウンで考えていたのに対し、「全てがつながった時代」においては顧客の実際の発言や行動を元にボトムアップで考えることが重要になっており、両者を抱合した形での「Whole Idea」に辿り着くことが重要であると強調されていました。
Nike+はiPodをもって走っている人たちが多くいるという認識と、センサーの進化によって技術的に可能になったという背景からボトムアップで始まったそうです。「全てがつながった時代」はマスメディア時代のように企業が何でもコントロールできる時代ではないが、Nike+のように企業側が発信するメッセージによってある程度方向性をつくることができ、そこを模索するのが重要ということのようです。
事例としては、Galaxyにおけるスマートウォッチのベゼルを回すというUX体験をダンスによって表現した動画などが紹介されていました。
日本においては広告代理店とコンサル会社の競合関係が注目を浴びつつありますし、私自身も先日「総合広告代理店とコンサル会社は、日本でも激突することになる 」という記事を書かせて頂きましたが。
Zasa氏の話を聞いていて強く感じたのは、結局、次世代エージェンシーであろうとマーケティング領域をカバーする次世代コンサル会社だろうと、デジタル時代や「全てがつながった時代」におけるクライアント企業のパートナーとしてのポジションを務めようと思うと、これら3つの事業全てに精通している必要がある時代になったということです。
その実行力はR/GAのように単独で自社内に構築していく方法もあれば、アクセンチュアによるIMJ買収のように複数の企業が連携することによって補完していく方法もあるのでしょう。
もちろん日本においては、Zasa氏が言うような明確に「インターネットが勝った」というメディア環境ではなく、マスメディアも相変わらず強い国ということもあるため、単純にR/GAのやり方を真似すれば良いというわけではありません。
ただ日本でも最終的に「つながる」人が増えていけば、広告主が「広告」主ではなくなりつつあるのと同様に、広告会社を「広告」会社と呼ぶこと自体に、違和感を持つ時代が日本でも到来するのかもしれません。