「メッセージアプリで企業と消費者が対話する時代が到来」 — ライブパーソン創業者

チャットやボット、人工知能(AI)を活用して、企業と消費者のコミュニケーションをより円滑にしていく試みが増えている。その最新動向について、Web上の接客サービスシステムを提供するライブパーソンの創業者兼CEOのロバート・ロカシオ氏の来日にともない、インタビューを行った。

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—日本でもAIやチャット、ボットを活用したコミュニケーションに注目が集まっている。ライブパーソンとして、こうした企業と消費者の関係の変化をどう考えているのか?

ライブパーソンは、これまで20年にわたってオンラインチャットやメッセージサービスを提供し、企業と消費者の関係構築を手掛けてきた。特に近年、世界中で企業と消費者のつながり方が変化しているが、それはLINEやFacebook Messengerといったモバイルアプリを活用した、テキストメッセージでのコミュニケーションだと言える。

—日本のメッセージアプリのシェアを見るとLINEが圧倒的に強い。グローバルでのメッセージアプリの動向についてどう見ている?

コミュニケーションのプラットフォームは、大きく3つあると考えている。北米はFacebookのFacebook MessengerとWhatsApp、日本や台湾、インドネシアはLINE、中国はWeChat。日本で盛り上がっているのはLINEなので、我々と提携している電通アイソバーと協力してLINEを通した消費者と企業のコミュニケーションを進めていきたい。

特にこの3つのプラットフォームの中で、企業と消費者との関係構築で成功しているのはWeChatだと考えている。すでにEコマースでの企業と消費者のやり取りに活用されている。中国では、WeChatがコミュニケーションの全てを担っていると感じるが、北米や日本は、モバイルアプリをオウンドメディアとして捉え、消費者との関係をよりコントロールしたいと考えているように思う。

ヨーロッパは、全体で見ると経済情勢が良くなく、競争も激化しているため、アジアや北米ほど重視していない。

—日本では、マーケティング部門とカスタマーサポート部門が断絶している企業が多い。今後、その連携は進むのか?

マーケティングとカスタマーサポートの2部門ではなく、セールス部門も含めた3つの部門の断絶があると考えている。今後は、マーケティング部門がメッセージアプリから得られた豊富なデータをもとにボットで返し、より密なつながりを希望する人にはカスタマーサポートやセールスが対応するなど、より連携した関係になるはずだ。

ライブパーソン ジャパン 設立者兼CEOのロバート・ロカシオ氏(右)と、電通アイソバー 代表取締役社長 得丸英俊氏(左)。電通アイソバーにて取材。

—ライブパーソンはフェイスブックとの提携を強化している。具体的には、どのような試みが進んでいるのか?

1ヶ月前に開催されたFacebookのカンファレンス「F8」で、花の通販会社のデモンストレーションが行われた。そこでは、通販会社が消費者からFacebook Messenger上で顧客の注文を受けたり、問い合わせ対応をしたりした。この裏側にいるオペレーターはライブパーソンのダッシュボードを使って、コミュニケーションしている。

米国での携帯電話の使用時間を調査した。その結果、携帯を使っている時間のうち、1位と2位はテキストメッセージの送信と受信だった。3位が写真で、4位がフェイスブックなどのオンラインサービス、5位がアラーム、6位が電話だった。使用用途の6位が電話だったのだが、企業と消費者のコミュニケーションはいまだに電話が多く活用されている。これは、消費者の行動の変化に企業が追いついていないということだ。

シティバンクやHSBCといった大手銀行は、コールセンターでの電話対応に年間で20億ドルもの大金を使っている。電話1回あたり6ドルかけており、1日に多くの金額を顧客が望んでいない方法へ対価として支払っている。

今後は、メッセージアプリを使ったコミュニケーションを好むユーザーが確実に増えてくるだろう。Facebookとの試みはまだスタートしたばかりだが、ライブパーソンはさまざまなプラットフォームとの関係を強化していく。

—今後、消費者と企業がメッセンジャーアプリを通じて、よりライトにコミュニケーションできるようになる。そのときに、マーケターに必要な考え方は?

まず企業と消費者がより「ライト」につながれる時代になったのではなく、逆に「ディープ」な関係がつくれるようになると考えている。これまで電話や店舗での訪問は、点でのつながりだった。広告も同じで、テレビCMや交通広告も点での接点と言える。デジタルマーケティングは、こうした点をデータで線にするもので、今後は「トランザクション」から「エンゲージメント」、「コミュニケーション」から「コネクション」という考え方が重要になるだろう。


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