マンガの力で世界に発信
井口:では最後にスパイスコミニケーションズの取り組みを紹介いただきます。クライアントは赤十字国際委員会(ICRC)で、「ジャーナルコミック」という興味深い手法をとったPRをされていましたよね。
佐藤:赤十字国際委員会の活動は紛争地でなければなかなかクローズアップされませんが、平和な日本では実際に赤十字がどんな活動をしているのか知る機会が非常に少ない。我々のミッションは、クライアントの活動を何かしらの形で発信していくことでして、その手段としてマンガをつくることにしました。
井口:アフリカで取材されたんですよね。
佐藤:弊社会長の大石賢一は石ノ森章太郎やはしもとみつおのマンガの原作者でもあります。大石がコンゴ民主共和国を訪れ、現地のリアルな情報をベースに自身がジャーナリストとしてストーリーを組み立てていったんです。
横田:しかし、安全な場所とは言えませんよね。
佐藤:まさにその通りです。当時はエボラ出血熱が蔓延した時期で、現地も武装勢力が拠点を置く非常に危険な地域です。しかし、そこに行かなければ分からない情報はたくさんありますから、あえてリスクをとって取材を敢行しました。
井口:まさしく命がけのPRですね。
佐藤:そうしてでき上がったのが、紛争地での「性暴力」と「少年兵」をテーマにした『14歳の兵士 ザザ』(学研プラス刊)です。我々のPRの狙いはもちろんこの本を売ることではなく、そのストーリーの裏にどんなクライアントの活動や思いがあるのかを広めることにあります。そこで、同時にマンガに紐づいた『MANGA×ひとのチカラ』というランディングページも立ち上げました。ここではマンガのストーリーやあらすじではなく、現地取材でどんなことがあったのか、赤十字は現地でどんな活動をしているのかを掲載することで、クライアントのミッション達成につなげていきました。
井口:マンガに目をつけたのはなぜですか?
佐藤:マンガはいま世界的にも評価されている日本の誇るべき文化です。そして、イラストをメインにストーリーを展開するマンガというスタイルを採用することで、言語を変えて発行すれば世界中の人が読んでその世界観を共有することができます。実際にこの本も英語版と中国語版での出版が決定しています。最終的にはスワヒリ語で翻訳をして、アフリカ諸国の子どもたちにも読んでもらうことをゴールに掲げているんです。
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