「広報の仕掛け人」たちに聞く、PRの今とこれから

広がるPRの領域

井口:3社のPRの最前線を行く事例を見てきましたが、最後にこれからの時代に必要なPRのスキルや考え方についてお聞きできればと思います。

中尾:ニューカレドニアのPRを通して感じたことでもありますが、単なるパブリシティの獲得だけでは顧客満足は得られない時代になっていると思います。どうしたらブランドの世界観を高めていくことができるかについてコンサルテーションすることに、PR会社の存在意義はありますよね。

井口:PRにもクリエイティブの視点が必要とされていることは間違いないと思います。キャンドルウィックは商品開発もされていますしね。

中尾:ライフスタイル全般をPRできる会社でありたいと思っています。だからこそ、自分たちも生活者の視点を忘れないよう、社員一人ひとりもワークライフバランスのとれた働き方ができる職場を目指しています。

井口:横田さんはいかがですか。

横田:コミュニケーションの目的とターゲットが一体何なのかを常に考えておく必要があると思います。その上で、私は社会性、時事性、新奇性の3視点を持つように心がけているのですが、いま社会にこんな課題があるから、クライアントのサービスでこういうベネフィットを世の中に出せますよね、と提案をしていくべきですし、世の中にもそんな見せ方ができるよう知恵を絞っていきたいです。

井口:それが今回のPRドリブン経営やロビー活動に表れている気がします。

横田:ファクトやコンテンツがあるからとりあえずメディアに向けて情報を出してみようというスタイルではなく、マイルストーンを置いてそこに向かったPRをしていきたいですね。

井口:最後に佐藤さんお願いします。

佐藤:私たちPR会社も単なるPRの代行者ではなく、クライアントのビジネスパートナーになるというスタンスが大事だと思います。今回のマンガの制作時も、クライアントとはケンカに近いような空気で議論をしたこともあったのですが、そういう議論ができたからこそ、世界で共感できるようなコンテンツがつくれたんだと思います。また、マンガが翻訳されて世界各地で読まれれば、コンテンツが副次的な広がりをもつことになるわけですから、それこそPRパーソン冥利に尽きますね。

井口:海外のアワードの審査員を務めることがあるのですが、評価されるのはまさにそういうこと。第一段階の設定ゴールから、さらにその先に自然伝播・自然拡張するポテンシャルを持っているかどうかということは非常に重要だと思います。いま日本のPRは着々と進化していますし、これまでPRに注力してこなかった企業の方々にも確実に理解もされてきています。だからこそ、これからはPRが日本の経済、社会、そして文化の中でいろいろな役割を担うことになりそうですね。

井之上パブリックリレーションズ
アカウントサービス 本部 戦略企画部 部長 横田和明(よこた・かずあき)氏

旭化成ホームズで住宅営業に携わったのち、2011年井之上パブリックリレーションズ入社。クライアントのPRコンサルテーションのほか、自社の広報から社員研修の企画まで幅広く担当する。PRへの関心は、早稲田大学在学中に同社の井之上喬社長(現会長)の講義を受けたことがきっかけ。

 

キャンドルウィック
シニア アカウントエグゼクティブ 中尾海音(なかお・みね)氏

ラグジュアリーファッションのPRアシスタント、世界のホテルや観光局のPR担当、イタリア駐在を経て、2013年キャンドルウィックに入社。ニューカレドニア観光局のほか、マレーシア政府観光局のプロジェクトも担当しており、主にメディアリレーションズを受け持つ。

 

スパイスコミニケーションズ
コミュニケーション・デザイン本部 クリエイティブ・ディレクター
佐藤裕志(さとう・ひろし)氏

ネコ・パブリッシングを経て、2006年スパイスコミニケーションズ入社。アパレルから出版社まで、あらゆる領域のPRを手がける。最近関心が高いのはウェブ活用のPR施策。このほか、スニーカーのムック本の編集にも携わる。

 

[モデレーター]
電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長
井口 理(いのくち・ただし)氏

1990年、電通PRセンター(現電通パブリックリレーションズ)入社。コミュニケーションデザインを手がけるチーフPRプランナー。企業のコーポレートコミュニケーションから、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体PRまで、幅広く手掛ける。

 


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