(前編のビンセント・ニコル氏の記事はこちら)
デイビッド・ブレッケン氏は、英国発のマーケティング専門メディア『Campaign』のアジア・パシフィック版を担当するエグゼクティブ・エディターだ。日本に駐在し、記者としても広告主企業や広告企業の動向を世界に伝えている。彼はどんな眼差しで、訪日客向けの施策を見ているのだろうか。
外国人にとってハードルの高い国、日本
個人的には、「これは訪日観光客向けの広告だな」と感じるものに出会った実感がありません。それは広告だけのことではないのです。英語でメッセージを伝えようとする表現物が、最も訪日観光客が集まる東京でさえ、ほとんど見当たらない。
唯一、印象に残った広告は、伊勢丹百貨店による「this is japan.」キャンペーンです。ただ、これにも実は違和感を抱いていたのですが、(this is japan.と銘打ちながら)広告モデルが明らかに日本人ではない。ちょっと不思議に思います。
訪日客向けの広告では何よりもまず、「迎え入れる気持ちがある」ということを感じてもらうべきです。それだけで、そのブランドは、単に日本語でアピールしているだけの競合他社とは、全く異なるポジションを簡単に築けるはずです。
日本は皆さんが思うより、外国人にとってハードルの高い国なんです。飲食店で注文することにしても、やりたいことや行きたい場所を探すにしても、旅行プランを考えるにしても……すべてにおいて、あまりにも言葉の壁が高すぎるんです。
ですから、どこかの企業が、モバイルアプリなどを活用して、情報を求める訪日客を助けてくれたなら、とても歓迎されると思いますよ。
たいていの場合、あるファッションやライフスタイルブランドを好む人は、ほかの分野でも、それと似たようなテイストを求めることが多いわけです。行く場所にしても、それこそ、レストランを選ぶ場合でも。
(自分たちのブランドと相性のいい場所などを選んで)一般的なガイドブックに載っていないようなモノゴトを紹介するだけで、旅行客は何か特別なものを見つけた気分になります。それだけでなく、情報をくれたブランドへも好意を抱くようになるはずです。
ブランドが旅行者向けの情報を提供するだけで、それはそのブランドにとっても、自分たちを魅力的に見せ、差別化を図るための良い手法になるのではないでしょうか。
また、店員とのコミュニケーションも旅行客にとっては難関です。ロンドンのハロッズをご存知ですか?
ハロッズでは、二つ以上の言語を扱える店員はその言語の国旗をあしらったバッジを付けているんです。
その結果、英語を話せない観光客でも、自分たちの言葉が通じる店員を簡単に見つけて、買い物を楽しむことができます。日本でも、百貨店のようなハイエンドな店鋪であれば、これは実行したほうがいいのではないかと思いますね。
【『販促会議』7月号】特集「インバウンド×地方創生」
「訪日客をどう地域に向かわせる?」
・「アート」に活路を見出す香川県の挑戦
・パウダースノーだけじゃない「世界が選ぶ」ニセコの取り組み
・キャナルシティ博多流「真心接客」でリピーター獲得目指す
「訪日客をどう受け入れ、対応する?」
・外国語が堪能なスタッフを主役に Zoff Park 原宿店
・日本のインバウンドマーケティング外国人マーケターはどう見る?
「訪日客へ向け、どうコミュニケーションする?」
・GWに北海道を観光旅行 訪日中国人の“リアル”レポート
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