「中国人旅行客をターゲットにしたインバウンド・マーケティング–地図を活用した位置情報サービスでインバウンドの可能性を探る」
第一部は、中国における検索で80%以上のシェアを持つバイドゥ(百度)によるオープニングトークでスタートした。同社 高橋氏は、中国人旅行客の消費を促すために「訪日前」「訪日中」「訪日後」の3つのフェーズでアプローチすることが重要だと解説する。
「調査によると、日本で購入した商品の約40%は訪日前に購入を決めたもの、残りの60%が訪日中の意思決定で決まる。訪日前にしっかり情報発信するだけなく、訪日中にもアプローチし、実際に来店させ、その体験を口コミとして蓄積させていくことが求められる。その情報が検索によってインデックス化され、次のインバウンドや越境ECへとつながるため、このサイクルを抑えることが大切になる」。
バイドゥ(百度)では2月に、こうした企業をサポートするために中国語の日本地図サイト「百度地図」をリリースした。中国本土ではグーグルマップが使えないため、多くの旅行客が日本でホテルや観光施設に置いてある周辺地図、もしくはガイドを使い観光している。この「百度地図」を通じて、旅行客だけでなく、訪日中の店舗への送客も支援していくと話した。
その後のパネルディスカッションは、ぐるなびの水野氏、三越伊勢丹ホールディングスの瓦林氏、公益財団法人京都文化交流コンベンションビューローの赤星氏の3名が登壇し、インバウンドの取り組みと課題を紹介した。
全国27店舗の免税売上のうち約6割が中国人観光客の売上が占める三越伊勢丹ホールディングスの瓦林氏は、「2016年4月の全国百貨店の免税売上が39ヶ月ぶりに前年比を下回った。客数は伸びているが、客単価が8割程度に落ちている。一番の理由はアジア各国からの観光客の関心や購買が変化したこと。これまではブランドバッグや宝飾品などの購入が多かったが、今はベビー用品やインテリア用品などに関心が移っている」と中国人観光客の変化に触れた。
また、「日本では三越と言えば日本橋だが、外国人観光客には銀座の店舗の方が有名。そのため、外国人観光客向けのSNSは銀座の店名を前に出すなど、社内の常識を変えている」と話した。その他、東京3店舗(新宿、銀座、日本橋)の免税売上の7割が中国人、福岡岩田屋では韓国人の売上が多いなどエリアの違いを例に、エリアごとに戦略を変える必要性や、データ分析がビジネスチャンスに繋がるとアドバイスした。
京都文化交流コンベンションビューローの赤星氏は、「我々は京都ブランドをいかに世界に出して行くかに注力している。海外の一流メディアが取材したいと思う京都バリューを愚直に打ち出してきたが、その結果、アメリカの『Travel + Leisure(トラベル・アンド・レジャー)』誌で、世界の人気都市ナンバーワンに2年連続でなった。これがさらなる好循環を生み出している」と話した。
今後の課題としては、「京都の中国人観光客の売上は前年比減。ホテルの価格が上がっていることもあるが、1回行けば充分という意識が蔓延している。それを払拭するための強力なコンテンツ、付加価値などメリットを点ではなく面で訴求したい」と話した。
ぐるなび 水野氏は、2015年にリニューアルした外国語版の飲食店情報検索サイト「ぐるなび外国語版」を紹介。「外国人のニーズを調査すると、メニューを見てもどんな食べ物か分からない、お店に入りにくいという意見があった。それを変えて行こうと『ぐるなび外国版』の開発に取り組んだ」(水野氏)。
外国人向けの案内ツール、コミュニケーションツールも用意されている同サービスは、すでに8万2000以上もの施設が利用している。今後は、「日本の多様な食文化、精神性を外国人観光客に楽しんでいただくための仕組みをさらに増やしたい」と話した。
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バイドゥ株式会社
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