FRACTAブランディングスクール【第1回】消費者との信頼構築こそブランディングの本質

ブランディングの本質

ではブランディングの本質とは何か。松岡氏は、日本においてブランディングがどのように受容され、広がっていったのかについて触れながら講義を進めた。

「戦後の民主主義教育を受けた第一次ベビーブーム世代は、高度経済成長により所得が増えたこともあり、自由に商品を選べる消費者として登場しました。この世代の特徴は、既存の消費者が変化したのではなく、新しい消費者の層として出現したことです。彼らのような『新世代消費者』は、消費を通じてアイデンティティを形成したという点でも画期的です。つまり、自分を表現するための手段としてブランドを求め、 そのブランドを消費することでアイデンティティの差別化や同化を図りました」(松岡氏)。

日本において、ブランドやブランディン グという言葉は「品質を保証する」という本来の意味よりも、単なるマーケティングの手段としての側面が強く意識・受容された。「そのため、ブランドやブランディングという言葉が、やや異なった意味で認識されてしまうことにつながったのでは」と松岡氏は指摘する。

ここで松岡氏は受講者に「ブランディングで最も重要なことは何でしょうか?」と質問。グループごとに考えをまとめるよう促した。各グループは 「モノやサービスを、消費者にインパクトある形で継 続的にアピールすること」「商品・サービスの価値をブレずに発信し続けること。発信チャネルやタイミングなど変動要素はあるが、根本がブレると永続的に発信できない」と回答。

松岡芳美氏(写真右上)。企業のブランド構築、リブランディングを専門にコンサルティング・支援を行うブランディング・ディレクター、アートディレクター。

松岡氏はさらに「では、なぜそれが必要 なのでしょうか? 深掘りして考えてみてください」と投げかける。すると、「良いモノやサービスが消費されることで社会が良い方向に変化する。継続的に発信を行うには、ブランドを支持するファンが必要だ」などといった意見が挙がった。

これを受け、松岡氏は「まさにその通りです。この時、消費者が『あの店の商品を買いたい』、そして企業が『あの人に商品を買っていただきたい』と互いに思う関係、 すなわち『信頼関係』が成立しています。 この状態を持続させるために行うのがブランディングです。つまりブランディングに おいて重要なのは、消費者との信頼関係の構築。それを核に、企業が利益を上げ、競争に生き残ることがブランディングの目的です」とまとめた。

社内での認識一致が重要

ここまでで、ブランディングの理想状態とは、「消費者(顧客)と企業との信頼関係が構築され、しかも持続していること」であると導き出された。

「さらに、この関係を持続させるためには、信頼関係の構築・保持・強化が必要」と松岡氏。これを受けて河野氏は「ブランディングを推進するには、まず、企業内でブランディングに対して抱いている、ぼんやりとしたイメージを明確にすることが重要」と呼びかけた。ブランディングに対する理解や重要性への認識が、個人や部門によって異なるのは当然だ。しかし、この状態では、企業が消費者に発信するメッセー ジも統一性や継続性を欠いたものとなることは想像に難くない。

また河野氏は、ブランディングの成果を可視化・共有するのに役立つ、国内外のさまざまなツールも紹介した。社内におけるデジタルのプレゼンスを高めるためには、 デジタルによって「社内外に散在するあら ゆる顧客データを統合し、見える化できるということ」「部門間・部門内の情報共有がスムーズになること」などを実感させる必要があり、そのためにはツールの活用が 不可欠と強調した。

「ブランディングをめぐる難しさは、社内での認識がバラバラなこと。これを克服するためのインナーブランディング、つまり社内での認識の一致が重要です。ここにいる受講者の皆さんは、上司と部下、先輩と後輩などではない、フラットな関係にあります。ここでのつながりや、議論を通じて得られた知見を、インナーブランディン グを実行する上での武器にしてください」と話し、第1回の勉強会を締めくくった。

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