講演者
- 小和田 みどり(ライオン 宣伝部長)
- 菅野 亜紀子(日産自動車 日本マーケティング本部 ブランド&メディア戦略部 部長)
デジタル時代に合わせ、組織を改編
「データドリブンからヒューマンドリブンへ」—企業のデジタル化、マーケティングのデジタル化を実行するにあたっては、今回の「インターネット・マーケティングフォーラム」のテーマでもある、この視点が欠かせない。ツールやプラットフォームといったソリューションありきではなく、それらを導入することで消費者の真の姿を把握し、消費者目線のコミュニケーションやサービスを実行していく。この目的意識こそ、デジタルシフトにおいて最も重要なことと言える。
本フォーラムの基調講演に登壇した日産自動車とライオンは、変わる消費者に対応するために、どのような変革を実践しているのか。両社でそれぞれ宣伝・マーケティングを統括する責任者が、取り組みの今を語り、意見を交わした。
デジタル化により顧客独自による情報収集が促進
—デジタル化が進んでいますが、消費者の購買行動に対して、変化を感じますか。
菅野:自動車業界における大きな変化としては、お客さまがディーラーに足を運ぶ回数が減ったことが挙げられます。今から10年ほど前には、購入までに何度もディーラーに足を運ぶお客さまが多くいらっしゃいましたが、最近では購入に至るまでの来店は平均で2回程度にまで減少しました。その理由として、やはりデジタル化が大きく影響していると感じます。今までは、ディーラーで情報収集をされていたお客さまも、ディーラーに足を運ばれる前に、自ら情報を習得され、購入する車種を絞りこんでいる、といった光景がよく見受けられます。つまりディーラーに足を運ぶ前にサイトを見たりSNS等で一般の方の意見を聞いたりし、購入する車種を絞りこんでいるということです。デジタルの役割が日ましに大きくなっていることを実感しています。
小和田:ライオンが扱うようなコモディティ商品は、自動車のように購入前に商品について調べない方がほとんどです。日用品は店頭決定率がとても高く、8割以上の購買が店頭価格や、キャンペーンの有無などで決まると言われています。ただ、デジタル化による変化をまるで感じていないわけではありません。今までは、新製品が出たことを、私どもがマス広告で一方的に情報発信をするだけでしたが、近年は、お客さま自身がSNS等を通じて発信する場が多くあり、影響力も強まってきました。
その中には、良い評価ばかりではなく、「使ってみたけど、大したことがなかった」というような、マイナスの評価もあります。今後は広告を配信する際にも、お客さま自身による発信の影響力を考慮したプランニングが必要とされていると感じます。