石川善樹×ドミニク・チェン×水口哲也×山川宏×日塔史「人工知能は『アル』から『イル』へ。」【後編】

AIの議論をブラックボックスにするべきではない

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ドミニク:AIについて議論すると、必ず「AIが悪用されたらどうするのか」という話が出てきます。僕がいつも思うのは、こういうことを語るときの思考のモードみたいなものが、まだ獲得できていないということ。「この人はポジティブな人だから」「ネガティブな人だから」という先入観が入ってしまって、フリーハンドで建設的な合意形成や議論がしづらいと感じます。
今、僕が AIで希望を感じるのは、人工知能技術と前線で対峙している人たちが、 AIの倫理の議論をしている点です。技術が民生に下りてきてブラックボックスでなくなってくれば、そういう議論ももっとオープンになっていくはず。善悪といった価値観に終始してしまうのではなく、とにかくオープンな状況が生まれて、それをチェックできる人が増えて、アイデアの確率を増やすことに集中する。僕はそれが一番いいことだと思っています。

山川:人工知能がわれわれの生活の中に非常にシームレスに溶け込んでくることは間違いないと思います。一方で、今この時に生きている人の幸せも大事ですが、この次の世代に僕らは何を残していきたいのかを問うことも同時に重要と思っています。少し考えを広げて地球史をひもとくならば、確かに私たち生物は命をつないできたのですが、個々の生物種を見れば99%以上が絶滅しています。ですから50万年後に私たち人類が現在の形で存続し続けるとは考えにくいでしょう。人工知能が大きく発達した今、私たち大きな力を持つともに、私たち自身のことをより深く知るようになりつつあります。今、私たちは未来に向けて、人工知能と共にどのように歩み、いったい何を託し託さないのか、といったことも含め、この先の世界について考えざるを得ない時代に差し掛かってきたのではと感じています。

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石川善樹(いしかわ・よしき)
株式会社Campus for H共同創業者

1981年広島県生まれ。東京大学医学部健康科学卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修士課程を経て、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとした学際的研究に従事。専門分野は、予防医学、行動科学、マーケティング、計算創造学、計算社会科学など。講演や雑誌、テレビへの出演も多数。著書に『疲れない脳をつくる生活習慣』(プレジデント社)『最後のダイエット』(マガジンハウス)、『友だちの数で寿命はきまる』(マガジンハウス)など。

 

ドミニク・チェン

1981年、東京生まれ、フランス国籍。博士(学際情報学)。2008年度IPA未踏IT人材発掘・育成事業でスーパークリエータ認定。NPO法人コモンスフィア理事として、新しい著作権の仕組みクリエイティブ・コモンズの普及に努めてきた他、2008年に創業した株式会社ディヴィデュアルでは「いきるためのメディア」をモットーに「リグレト」(ウェブ)や「Picsee」(iPhone)、「シンクル」(iPhone/Android)などさまざまなソフトウエアやアプリの企画・開発を行っている。2015年度NHK NEWSWEB 第4期ネットナビゲーター。2016年度グッドデザイン賞「情報と技術」フォーカスイシューディレクターを努める。監訳書にマレー・シャナハン著『シンギュラリティ:人工知能から超知能へ』、単著に『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック』などがある。

 

水口哲也(みずぐち・てつや)
レゾネア代表/米国法人enhance games CEO。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科特任教授

ビデオゲーム、音楽、映像、アプリケーション設計など、共感覚的アプローチで創作活動を続けている。2001年「Rez」を発表。その後、音楽の演奏感を持ったパズルゲーム「ルミネス」(2004)、キネクトを用い指揮者のように操作しながら共感覚体験を可能にした「Child of Eden」(2010)、RezのVR拡張版である「Rez Infinite」(2016)など、独創性の高いゲーム作品を制作し続けている。Rezで2002年文化庁メディア芸術祭特別賞、Ars Electoronicaインタラクティブアート部門名誉賞などを受賞。2006年には全米プロデューサー協会(PGA)とHollywood Reporter誌が合同で選ぶ「Digital 50」(世界のデジタル・イノベーター50人)の1人に選出される。2007年文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門審査主査、2009年日本賞審査員、2010年芸術選奨選考審査員などを歴任。

 

山川宏(やまかわ・ひろし)

1987年東京理科大学理学部物理学科卒業。1989年東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 修士課程修了。1992年東京大学大学院 工学系研究科 電子工学専攻 博士課程修了。1992年富士通研究所入社。1994年同社から通産省RWCプロジェクトに参加。2014年ドワンゴ 人工知能研究所 所長。2015年産総研人工知能研究センター客員研究員就任。2015年特定非営利活動法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ 代表就任。2015年電気通信大学大学院 情報システム学研究科客員教授就任。工学博士。専門は人工知能、特に認知アーキテクチャー、概念獲得、ニューロコンピューティング、意見集約技術など。

 

日塔史(にっとう・ふみと)
電通 イベント&スペース・デザイン局 エクスペリエンス・テクノロジー部所属

現在、「体験価値マーケティング」をテーマにしたソリューション開発を行っている。論文『AI革命の「大分岐」で広告業界が動く~人を動かす次世代エージェント』が第45回(2015年度)日本広告業協会懸賞論文「論文の部」金賞を受賞(前年からの金賞連続受賞)。人工知能などの加速するテクノロジーを活用したビジネス開発を行うチームを結成、リーダーとして活動中。

 

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