全てのステークホルダーを巻き込めるストーリー
ただ、ここで多くの企業が陥りがちなのが、カスタマーセントリックの本質をはき違え、無責任に消費者に判断を委ねてしまうことです。「共創マーケティング」が日本の企業で、なかなかうまくいかないのも、この本質の読み違えにあると思います。消費者インサイトを深掘りしつつ、一方では自分たちの商品・サービスの他にはない絶対無二の特性を見つけ出す。そして消費者インサイトとその絶対無二の特性との接点を生み出すようなシナリオをつくり出すことが、成果につながるカスタマーセントリック思考の実践なのです。
新刊の書籍では、私たちインテグレートがこれまで実践してきた、そのプロセスをできるだけ、わかりやすく解説することに努めました。ただ本著は実用書ではありますが、「この手法を取り入れれば、すぐに売上が上がる!」といった安易な解説本ではありません。険しくとも、真のマーケティングに取り組もうと未知の領域に足を踏み入れようとしている方に手に取っていただきたいと思います。
加えて私たちが実践するマーケティングのシナリオづくりの手法である「情報クリエイティブ」では、消費者だけでなく「メディア」「専門家」「流通」も加えた4者のステークホルダーのインサイトを把握するようにしています。社内の他部門も含め、その商品が売れ続けるために関係する、すべてのステークホルダーが巻き込まれたくなるようなストーリーの形へと昇華させる必要があります。その意味でも、新刊の書籍は「安易な解説本ではない」と述べました。
デジタルの進化で、消費者と接点を持てるメディアは爆発的に増えました。しかし、そのメディアの新しい組み合わせを考える、コミュニケーション中心のマーケティングでは、モノが売れない時代に立ち向かえるだけの競争力はつくれません。今こそ、より緻密で広義なマーケティングへの進化が必要とされていると言えるのではないでしょうか。
顧客の顕在ニーズを刈り取るだけで、新たな需要の創造ができていない。そんな悩めるマーケターに、いま必要なのは、消費者の心の奥にある、彼ら自身も気づいていない本音をつかむこと。そして、企業内にカスタマー・セントリック( 顧客中心主義)の思想を根付かせること。意思決定の基準を「顧客」に置き、イノベーションを起こすためのインテグレート流のメソッドを解説。
- 著者/藤田康人、三宅隆之、村澤典知(共著)
- 価格/ 1728円(税込)
- 発売日/ 2016年7月5日
- 発行元/宣伝会議