マーケティングは関係性の構築の時代へ 経営トップが考える、これからの顧客価値とデジタルの活用 ソニーマーケティング×メニコン×ルネサンス

既存顧客を定着させる施策で新規顧客も拡大

—消費者や市場の変化に対応するために、どのような対策をされていますか。

河野:当社は今、コミュニケーション戦略の転換を行っているところです。これまではプロダクトやそれを支える技術中心のコミュニケーションを行ってきましたが、近年はお客さま中心で思考するカスタマーマーケティング部門を立ち上げました。商品の体験価値を訴求しながらお客さまとの関係を深めていく。結果として、お客さまの定着、ファン化を推し進めることがこの組織のミッションです。今後の日本市場の見通しを考えても、ソニーマーケティングにとって、ソニーファンの創造は非常に重要な取り組みです。

メニコン 代表執行役社長 田中 英成 氏

田中:現在、当社の主軸となっている月々の定額制でコンタクトレンズをお使いいただける「メルスプラン」というサービスを思いついたのは1990年代後半のころは、いわゆるデフレスパイラルのまっ只中で、価格崩壊によって必要なサービスさえも提供できないだけでなく、眼障害になるユーザーも出始めている時期でした。そんななか、どのようにしたらエンドユーザーの目を守るサービスを展開できるだろうかと考え抜いた末に生まれたのが、定額制の会員システムでした。お陰様で、今では117万人の会員組織にまで成長することができました。メーカーでありながらBtoCのチャネルを持つ。それもメニコンの大きな強みになっています。

ルネサンス 代表取締役 社長執行役員 吉田 正昭 氏

吉田:我々の場合、フィットネスクラブやスポーツジムの新規顧客を獲得しても早い期間で辞めてしまい、なかなか歩止まりしませんでした。そこで、既存顧客を定着させる施策に方向転換しました。チラシ配りで効果の上がらない地域では、思い切ってチラシ配りをやめ、その分の経費として浮いた4億円を、施設の投資に回しました。さらに顧客接点を増大させることにも注力をしました。その結果、当初は既存顧客を定着させるための施策だったのですが、3年後には既存会員が1万人増え、8億円の利益増にもつながりました。

これからはフィットネスクラブも運動だけでは通用しない世の中になってくると感じています。新たにリンクアンドコミュニケーションと共同開発をした健康経営を支援するアプリ「カラダかわるNavi」の提供を今年の6月下旬から開始しましたが、今後、ますますヘルスケア領域への進出を図っていこうと考えています。

マーケターに求めるのは人の温度感を理解できること

—経営者のみなさんが求めるマーケティング人材の資質について教えてください。

河野:一番大切なことは、カスタマーサービスやセールスの垣根を越えて全体の顧客戦略を理解し、お客さまに向き合うことです。デジタルマーケティングは急速にAI化して進化していくのは間違いありません。そのデジタルツールを使いこなし、全体をデザインできるクリエイティビティを発揮することが、これから求められるマーケティング人材の資質です。そのためにも現場の温度感を大事にしてほしいですね。

田中:デジタル機器を使いこなす能力は絶対に必要ですが、商売の相手が人間であることを考えると、人の心をきちんと理解できることが必須です。マーケターは心を養わなければ本当の顧客満足を叶えるクリエイティブはできないと思います。また、海外と戦うために、日本(地域・国家など)の文化についてもしっかりと理解をした人材が欲しいと思います。

吉田:マーケティング担当は会社の正しい方向性を決める判断材料を生みだす人でなければいけません。当社では、地域の実情に合わせてノウハウをアウトプットするよう徹底しているので、現場にも入り、しっかりと現状を見ることが欠かせません。会社の生命線ともいえる部署だからこそ、企業方針を十分頭に入れて動ける人材を求めています。

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