メディア環境研究所が生活者のメディア接触の現状を年1回定点観測している「メディア定点調査」は、今年丸10年を迎えました。10年間の時系列分析から見えてきた変化のポイントをご紹介します。
メディア総接触時間は過去最高の393.8分。「携帯・スマホ」「タブレット」の合計は全体のシェアの3割へ
2016年のメディア総接触時間は393.8分(1日あたり・週平均)。昨年から10分強伸長し、初の390分台となりました。「携帯・スマホ」「タブレット」がメディア総接触時間の増加を牽引し、減少傾向にあったマスメディアは微増。減少したのは、PCのみでした。「携帯・スマホ」は10年前と比べると、接触時間は8倍強の90.7分、総接触時間に占めるシェアは約7倍の23.0%になりました。「携帯・スマホ」と「タブレット」を合わせたモバイルのシェアは29.3%と全体の3割に迫り、モバイルシフトが急速に進展したことがわかります。
モバイルシフトは急進期から安定期へ
調査開始時、1割に満たなかったスマホの所有率は今年7割超。これまで伸長し続けていましたが、昨年とほぼ変わらず横ばいでした。
モバイルシフトが一段落し、安定期に入ったことが、どのような変化をもたらすのかをメディアイメージの時系列推移から考察します。スマホの普及に伴い、「携帯・スマホ」のメディアイメージは急速に上昇。特に「情報が早くて新しい」「情報が幅広い」という情報のスピードや量に関するイメージが「携帯・スマホ」に移行したことが注目されます。モバイルシフトによって、情報のスピードは飛躍的に速くなり、情報量は膨大になりましたが、メディア環境にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。
鮮明化するメディアイメージ
「携帯・スマホ」のイメージの上昇に伴い、他メディアのイメージは下降傾向にありましたが、今年、多くのイメージが回復しました。「テレビ」は「分かりやすく伝えてくれる」、「ラジオ」は「生活者の声に耳を傾けてくれる感じ」、「新聞」は「ポリシーやメッセージを感じる」、「雑誌」は「センスがいい・カッコいい」といったイメージが上昇。モバイルの提供する情報のスピードと量が前提になることで、他メディアの提供する価値が見直され始めたと分析しました。
スピードと量が前提となったメディア環境において、同時に複数のスクリーンを見たり、必要なところだけ情報やコンテンツに接触するというメディア行動が生まれつつあります。生活者の興味をとらえるためには、モバイルの提供するスピードと量という価値と鮮明化してきた他メディアの価値を掛け合わせて、情報やコンテンツを届けることが、今メディアに求められているのではないでしょうか。
調査地区:東京都、大阪府、愛知県、高知県
標本抽出方法:RDD(Random Digit Dialing)
調査方法:郵送調査法
調査対象者:15~69歳の男女
標本構成:4地区計 2,543サンプル(東京637、大阪641、愛知644、高知621)
2015年住民基本台帳に基づき性年代でウエイトバックを実施
調査期間:2016年1月28日~2月12日
調査機関:ビデオリサーチ
※スマホの所有率は2010年より調査開始
博報堂DYメディアパートナーズ
メディア環境研究所 上席研究員 新美 妙子
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