日本の「洋楽」市場を大きくするためのクチコミ戦略(ユニバーサルミュージック)

「ストリートプロモーション」の次を探して

佐藤宙さん

佐藤:洋楽のプロモーションは4、5年前まで、「アーティストを日本でどうやって紹介するか」ということが主な仕事でした。我々の宣伝チームが、さまざまなメディアを通じてアーティストを紹介していくのですが、それは当然、レコード会社の理屈でアウトプットしていくものでした。

今はTwitterやFacebookなど色々なソーシャルメディアが普及しています。その中で、レコード会社発のアウトプットだけで情報を伝えようとすることには限界があります。ユーザーがネットで調べれば、いくらでも情報があるからです。

さらには「情報の信頼性」ですよね。我々がいくら「流行っている」という情報を流しても、それが本当かどうかはネットで調べればすぐにわかります。つまり、ネット上でユーザー同士が「これって、いいよね」と盛り上がっていない限り、我々の情報が受け入れてもらいにくい状況になったのです。

藤崎:音楽のプロモーションも難しい時代になったというわけですね。

佐藤:アンバサダープログラムに取り組む10年ほど前から、いわゆる「ストリートプロモーション」に取り組んでいました。これは音楽業界特有のプロモーションだと思いますので、少し解説します。

「ストリートプロモーション」とは、草の根的なプロモーション活動のことです。例えば、クラブなどで活躍しているDJやダンサーにサンプルを渡して視聴してもらい、良かったら広めてもらえるようにお願いします。さらに、そこから発展させて、各地域にいる音楽好きや特定のミュージシャンのファンを集めて、彼らにステッカーなどを配ってもらうことも行います。特に洋楽業界では、ある時期からこうした草の的な取り組みを盛んに行ってきた背景があるのです。

藤崎実

藤崎:音楽は趣味性が高いため、マスメディアからの情報ではなく、音楽に詳しい人からのクチコミが効くというのはよくわかります。

佐藤:ただ当時から、約10年たって時代も変わりました。ソーシャルメディアの発展によって、個人が情報発信できるようになりました。そこで、洋楽の知識があり、拡散力を持った人たちに直接情報を共有することで、何か新しいプロモーションができるのではないかと考えるようになりました。

そんな時に「アンバサダープログラム」を知り、まさに我々が考えていることにフィットするのではないかなと思いました。

藤崎:興味深いですね。ストリートプロモーターの声も大事だが、それよりも一般の人の声を重視するということなのでしょうか。

次ページ 「重要なのは「どこまでリアルな声なのか」」へ続く

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藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)
藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

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