重要なのは「どこまでリアルな声なのか」
佐藤:我々やインフルエンサーからの情報発信も大切ですが、今は圧倒的に一般の人たちの声が重要です。大切なのは、「どこまでリアルな声なのか」に尽きます。
藤崎:「どこまでリアルな声なのか」、いいキーワードですね。
佐藤:「リアルな声」の中身は、三つあります。
1つは「情報の内容」です。いくらレコード会社やインフルエンサーからのアウトプットがあっても、それが本当か嘘か、今のユーザーは色々調べればわかります。そこで、「リアルな声」は、ユーザーの実感をともなったり、事実をベースにしたものだったりしなければなりません。
2つ目は、「情報の近さ」です。今の時代、たくさんの人たちに共感を持ってもらうために大事なのは、彼らのすぐ隣にいるくらいの距離感の人たちがどれだけ話題にしているのか、ということです。つまり、少し前はDJの卵さんからの情報発信でも良かったわけですが、今やそれ以上に身の周りにいる普通の人が影響力を持っています。
3つ目に大切なのは「多様性」です。これは先の2つと同時に成立するものなのですが、例え同じアーティストが好きでも、人それぞれに異なる感想や意見があるということです。
というわけで、その3つの「リアルな声」と、どうつきあうか、あるいはつくり出すかが、我々にとって一番重要になってきたのです。
藤崎:つまり、今までいろいろな手法を使ってきた流れの最新形として行き着いた先が「アンバサダープログラム」だったということですね。
佐藤:そういうことになります。
ファンとの関係づくりが最大の財産
藤崎:企業によっては、「ファンとのコミュニケーションが利益に結びつくのか」「ちゃんと反響があるのか」という話が社内から出て、「アンバサダープログラム」に許可がおりないという例もあるようです。御社の場合は、スムーズに導入できたのでしょうか。
佐藤:音楽を生み出すアーティストにとっての、一番の母体はファンです。アーティストは自身の考え方や伝えたいことを、それぞれ作品を通して表現している人たちです。つまり、ファンが母体となって、アーティストを支えているという関係になります。
もともとファンとの距離感が近いビジネスのため、アンバサダープログラムへの理解も得やすかったと思います。実際のところ、ファンの盛り上がりがスピーディーに我々に跳ね返ってきています。数値的な売り上げだけではなく、「アーティストブランド」にもつながっていると思っています。
藤崎:素晴らしいですね。
佐藤:対象とファンが近い関係にあるというのは一般の商品にも当てはまりますよね。例えば、誕生した背景に物語があるブランドであれば、熱狂的なファンがいますよね。
藤崎:その通りです。本質的には、「ブランドとファン」の関係も、「アーティストとファン」と同じ関係にあると思います。