「顧客体験」を軸に見つめなおすこれからの事業モデル・サービス

データ連携による顧客体験価値の向上

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当日はマーケティング担当者からカスタマーサポート担当者、システム担当者などを中心に、350名と多くの参加者が集まり、会場は盛り上がりを見せた。

パネルディスカッションの最初の質問は「顧客の体験価値」について。オムニチャネルでの顧客対応が進み、さまざまな顧客接点で、最も顧客体験の向上につながるものを聞いた。

渡邊氏は「重要なのはデータの連携」と語る。飛行機の出発時刻、トイレの場所など多くの確認事項がある空港を「日本一ストレスのたまる建物」と評し、これに対応すべく同社はiBeacon(通信機)を利用した空港ナビゲーションを実施。顧客の予約情報に合わせて最短の保安検査場を通知するサービスを行っているという。

「カスタマージャーニー上の空港や機内のストレスポイントを分析し、データ連携することで体験価値を深めていければと思っている」(渡邊氏)。

続く西本氏は、鍵として「外部企業との連携」を挙げた。自社だけの閉じた施策だけでなく、「Amazonなど外部のECサイトなどと連携し、気付いたら金融機関のサービスを使っていたという仕組みづくりが重要」と話した。

飯塚氏は顧客体験を高めるための軸として、「サービスの連続性と一貫性」、「パーソナライズ」の2点を挙げた。前者に関しては、「お客さまが前に何をしていたか、次に何を望むのか。カスタマージャーニー上で考えることが非常に重要」とした。

また、パーソナライズに関しては、「お客さまは自分だけの体験を欲しがるので、ワントゥワンの顧客対応が提供できるかが重要」と話した。

飯塚氏が語るように連続性と一貫性のある体験を提供することは重要だが、社内の他部門との調整に難しさを感じている企業は多い。そこで登壇した3社に、他部門との連携のために工夫していることや課題を聞いた。

西本氏は、「新しい施策は、法務やシステムの面でかなりのチェックが入る。部署ごとに調整しているとなかなか進まないが、新商品企画時に各部横断で一括して議論できる会議体があるため、迅速な意思決定ができる仕組みを整えている」と現状を話した。

また、「エンドユーザーとの接点はスマホが切り口。そこでキチンとしたサービスをしていかないとお客さまに選んでもらえないということを地道に話していくしかない」と語った。

渡邊氏は、「マーケティング部門の企画が、予算面やシステムで止まるというのはどの企業でもよくあるのではないだろうか」としながらも、「モバイルアプリは単なる飛び道具だと思われないように、経営戦略上の課題であるというレイヤーにもっていく必要がある」と社内での啓蒙活動の必要性を話した。

飯塚氏も、「渡邊氏らの言うように経営課題として取り上げること。また各部門が持っているデータを合わせるとカスタマージャーニーが見えてくる。お客様中心のエビデンスとして上申することが鍵」と解決策を挙げた。

続いて、Webからリアルまでさまざまなデータを収集する中で、顧客の動向について発見したこと、気付いたことを聞いた。

渡邉氏は「空港や機内のリアルな場とデータの連携が全くできていない。今後は連携に力を入れ、よりパーソナライズされたサービスの提供を目指したい」とした。

西本氏も同様に、「リアルチャネルでの行動を蓄積しているが、まだ連携が不十分。例えば、Webで投資信託のボタンを何回もクリックした人がリアル店舗にアクセスしたら、潜在顧客として投資信託の話をするなど活用していきたい」と話した。

顧客体験の向上が企業の未来をつくる

最後に、顧客体験の未来へのビジョンを聞いた。

渡邊氏は、「トライアンドエラーでいろんなことを行っているが、最終的にはお客さまにとってどうか。お客さまのためにならないサービスは受け入れられない」と語った。

西本氏も、「気の利いた心地良いサービスを提供していきたい。昨今、スマホなどさまざまなチャネルにより利便性が上がったが、人間がそもそも持っている五感が退化してしまう危険性もある。そうしたものは中長期的には避けるべき」と話した。

飯塚氏は、「2020年がいま目指すべき一つの未来。ビジネスモデル、テクノロジー、顧客体験、この3つをいかに高度にデザインして提供できるか。それが企業の未来につながると考えている」と語った。

顧客体験の向上のためにモバイルやデータ連携、テクノロジーの重要性を経営課題として認識し、取り組む必要性を伝え、パネルディスカッションは閉幕した。

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