Ingress、ポケモンGOの開発現場。Niantic川島優志さんに聞く。【後編】

海外での子育てについて

高:優志さんは4歳のお子さんがいらっしゃいます。僕も年が同じぐらいの子供がいます。僕は子供が出来てから本当に人生観というか、生きる上での優先順位ががらっと変わりました。

優志:変わるよね。僕も子供が生まれる前は仕事が第一の人間だった。よく家族が第一って言うけど、そこまで達観はできていなかった。でも今は家族の大切さが、実感として理解できるようになった。それは自分でも驚く変化でした。

アメリカ、特にこのベイエリアは気候もいいし、子育てには恵まれた環境だと思います。僕もなるべく家族との時間は大事にしようと心がけています。朝ごはんは子供と一緒に食べてから出勤し、夕方の5時過ぎには会社を出て、家に買ってまた夕御飯を家族と食べる。お風呂と寝かしつけは奥さんと日替わりで交代で、自分の番ではないときは皿洗いをしたり。子供が寝た後に仕事が残っていれば、仕事をしたり、そうでなければ本を読んだりテレビを見たり、自分の時間を楽しむようにしています。土日はちゃんと休めるし、平日でもそのぐらい余裕を持った生活ができるので、すごく恵まれているなと思います。そこはアメリカで働いてとても良い点ですね。

自分が育児や家事に積極的に、そして自主的に参加するこで、やっと子育てを当事者として理解できるようになった。奥さんにはずいぶん迷惑をかけてきてますが。

仕事しかしていないと中々そうは思えない。「働いてきたんだし、それくらいやってよ」みたいに考えてしまう。そういう古い価値観みたいなのが自分の中に残っている。

高:これはちょっと偏った考えかもしれないけれど、アメリカで会う、特に日本人同士のご夫婦は、夫婦仲や家族仲が良い人が本当に多いんですよね。両親や親戚は日本にいるので、頼る人間がお互いしかいない。子育てをしようものなら、協力し合わないと生活が成り立たなくなってしまう。だから自然と信頼関係とか家族仲が深まるのかもしれません。細かい理由はわからないけど、素敵なことだと思います。

優志:すごくファミリーを大事にするっていう、アメリカ文化的な影響もあるのかもしれない。家族を優先するのが当たり前の価値観がある。「家族が病気だから休みます」って言うのに後ろめたいこともない。

例えば子供の学校の行事と仕事の出張が重なったら、仕事を優先するのが日本の文化ですよね。親が死んだって1日しか休まなかったりする。僕もそういうタイプだった。

ある時に奥さんに「子供にとって父親は僕しかいない、でもあなたの代わりは会社にいくらでもいるでしょ。」って言われてハッとした。この仕事は自分にしかできないんだって思っていても、実際はそんなことないよね。それが自分でなくてもできるようにするのが会社の役目だし。それに仲間も助けてくれる。

うちのCEOだって、大事な会見と事前に計画していた子供の行事が重なった際に、家族の方を優先していた。リーダーが率先してそういう姿を見せるってすごく大事ですよね。

あとはベリエリアで暮らしていると、いろんな人種のいろんな文化を垣間見れる。メキシコ人は家族や兄妹ををすごく大事にする。インドもそうだね。中国も親や祖父祖母とのつながりみたいのをすごく大事にする。そういう色々な文化が混じりあって、すごく還元されている気がする。色々な文化の情報が入ってきて、そこから「これって人間として当たり前だよね」って良い所を見つけて取り入れていく。

日本では新しい文化が入っていくことに対して怖がる風潮があるけれど、でも変わることが自然であり、変化を拒むことの方が不自然だと思う。もっともっと他の文化と交流してそこから学んでいく、それが日本でも広まるといいと思う。

また、小さいうちの方が言語の習得には有利ですよね。もう子供の方が英語の発音がいいです。最近は発音を直されたり、わざわざ僕が苦手なLとRがたくさん入った単語を僕に読ませて、からかうようになりました。「Road Roller」とか。「違う!」て何度も読まされる(笑)。もちろんその分日本語がどうなるかわかりませんが、自分が言葉で苦労しているので余計に嬉しいですね。

次ページ 「海外のすゝ」へ続く

前のページ 次のページ
1 2 3 4
川島 高(アートディレクター)
川島 高(アートディレクター)

1981年生まれ。慶應義塾大学卒業後、2004年に渡米。文化庁が主催する新進芸術家海外研修員として、カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) にてメディアアート修士課程修了。アーティストとして作家活動を行う傍ら、アートディレクターとしてAKQAなどの広告代理店にて活動。日本人として初めてGoogleのクリエイティブラボに参画。サンフランシスコ在住。

Facebook: https://www.facebook.com/takashi.kawashima
Twitter: https://twitter.com/kawashima_san

川島 高(アートディレクター)

1981年生まれ。慶應義塾大学卒業後、2004年に渡米。文化庁が主催する新進芸術家海外研修員として、カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) にてメディアアート修士課程修了。アーティストとして作家活動を行う傍ら、アートディレクターとしてAKQAなどの広告代理店にて活動。日本人として初めてGoogleのクリエイティブラボに参画。サンフランシスコ在住。

Facebook: https://www.facebook.com/takashi.kawashima
Twitter: https://twitter.com/kawashima_san

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ