ASEAN向けのインバウンド戦略は「日本ならすぐ行ける」という感覚を刺激せよ
吉良:劇団四季は日本中に劇場があって、都市一極集中で公演をしないという伝統がありますね。
吉田: 2017年3月から8月に神奈川の芸術劇場で『オペラ座の怪人』が始まります。大阪では『キャッツ』がロングランをスタートしました。名古屋でも今は『オペラ座の怪人』を上演していますが、10月からは『リトルマーメイド』に切り替わります。2010年に一度撤退した福岡も3年限定でまた再開する予定です。北海道もテレビ塔のすぐ横に北海道四季劇場があり、今は『ウィキッド』を上演中です。
吉良:エンターテインメント・コンテンツが地方創生に結びついている良い事例ですね。ほか、インバウンド戦略はどのようにお考えでしょうか。
たとえば、日本人がブロードウェイで舞台を観るときに、少しだけ多くお金を払えば必ずと言っていいほど、当日券で観ることができます。それもトニー賞を獲っているような人気のものも。訪日観光客が日本を訪れた時に、思い立って当日に観劇できるような仕組みは作れないのでしょうか。
吉田:タイムリーな質問ですね。実はこの取材前に会議で、訪日観光客をどう呼ぶかについて話し合っていました。
ただ、現時点では答えはでていません。劇団四季で上演している作品の多くはブロードウェイが本場です。彼らが日本に来て、日本語で上演されるブロードウェイ作品を観たいのかどうかを考えなければならない。彼らが求めているのは何なのかを知ることが最も大切です。たとえば、歌舞伎や宝塚は日本でしか観られないという特徴がありますよね。もし四季が、本気で訪日観光客の観劇を促すのであれば、シルクドソレイユのようなノンバーバルのソフトを新たに作る必要があるかもしれません。
吉良:その分析は非常によくわかります。ただ、これから日本の消費を牽引するのは、中国やASEAN諸国からの観光客だと思います。こういった人たちの多くは、アメリカやロンドンには行けなくても、日本には行ける、という感覚があります。そこに勝機はあるんじゃないでしょうか。「日本でブロードウェイミュージカルが観られる」というイメージ戦略が十分に通用するように思います。