マーケターは「ポケモンGO」を単なるゲームアプリの流行と捉えると変化を見誤る

ポケモンGOがもたらした最も重要な変化とは

ポケモンGOが単にユーザーの可処分時間を獲得するだけでなく、GPSを使った位置情報のゲームであることによって、ポケモンを探すために家から出て歩き回るという行動を起こさせたことも画期的です。

というのも、もともとスマートフォンのインターネットを使ったデジタルツールはAmazonに代表されるように物理的な移動をしなくても様々な情報を得られる便利さが基本的な価値でした。しかし、このポケモンGOは、ユーザーにとってもっとも面倒だと思われる物理的な移動を促すことができます。

これこそがオムニチャネル的なアプローチや、O2Oによるマーケティングが目指していたことです。これまでは、ユーザーの行動を促すという面でも、リーチの面でも、コストがかかる施策だったため、たとえ成功してもスケールせずビジネスインパクトを強く出すことができませんでした。

しかし、ポケモンGOによるリアルでの人の移動は、間違いなくビジネスインパクトを与えるくらいの規模でスケールしていると思われます。なぜなら、いちいちデータを見なくとも、実際に街に出ればポケモンGOをプレイしている人がわかるくらいに多いからです。

このマーケティング効果に疑問を抱く人は確かにいますが、人のトラフィックの量だけはそう簡単に増やすことはできないことは、リテール業界では周知の事実です。だからこそ交通量が多いところに店舗を構えるのが基本なのですが、この規模の人が目に見える量で動くということは明らかにそのベネフィットは大きいと思われます。

大阪の商店街が集客のために、ポケモンGOでキャラクターを引き付けることができるアイテム「ルアーモジュール」を購入している、というニュースがありましたが、こういうことで人の流れが変わるのであれば効果は期待できるはずです。

そして、そうした直接的な誘引だけがポケモンGOの価値ではありません。もっとも大事なのは、デジタルツールがユーザーの行動習慣を変えることができる、という事実であると考えます。

それは実際には商業施設、道路や交通機関のようなリアルな空間を変える、つまり出店計画といった結果的に後で変更がきかない高コストなことを考えるよりも、ポケモンGOのようなユーザーを誘導できるデジタルツールを導入したほうが、その後のアップデートによる改善も想定すると、低コストで効果的であるとも言えるからです。

次ページ 「ポケモンGOは「探求」を促す」へ続く

前のページ 次のページ
1 2 3
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ