マーケターは「ポケモンGO」を単なるゲームアプリの流行と捉えると変化を見誤る

ポケモンGOは「探求」を促す

MITのアレックス・ペントランド教授は著書『ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』のなかで、人々は可処分所得が上がると、新しいところに出かけたり旅に出たりという自分のための移動行動といった「探求」のための時間が増えることを指摘しています。そして、この探求行動が多いと、新しいアイデアの発見や交流が促されて、さらなる経済行動が刺激されることがわかっています。

ポケモンGOは、この探求行動を文字どおり促進する動機をユーザーに与えることができます。マーケティング活動の中では直接的にリアル店舗に誘導することでもありますが、もっと広いスケールで考えると、ユーザーのいるエリアのコミュニティを活性化させる効果もあるということです。

つまりマーケティングとして考えると、ポケモンGOのような形で、発見や探求を促すエリアのコミュニティグループの行動を変えることができれば、新しいアイデアや人との交流を生み出していくことができるということです。

これは地方も含む都市開発のようなマーケティングにも活かせるでしょうし、人々のアイデアの交流を促すことで新しいインキュベーションを生み出す企業活動にも活用できるのではないでしょうか。

ペントランド教授によれば、探求が高まれば創造性は活性化されますが、同時に移動が無秩序に増えれば犯罪率が上がってしまうので、同一コミュニティ内ではお互いが知人や友人のような高いエンゲージメントがあったほうが社会的な抑制が効くことが指摘されています。そのため、なるべくリアルな場も含めたエンゲージメントが重要です。

ポケモンGOのユーザーもコミュニティ内でのエンゲージメントが高くなり、お互いをユーザーとして認識するようになれば、ただのゲーム熱中者としての批判を避けることができるでしょう。これはGPSを活用したランニングのアプリケーションにも言えることです。例えば、リアルなランニング仲間としてのエンゲージメントが高い人同士がアプリを通してバーチャルに交流すれば物理的に離れていても、探求行動によって刺激を受けられるということです。

このようにポケモンGOのブームについて単純にゲームアプリの流行として捉えるだけでなく、この成功によって見えてくるモバイルユーザーとしてのスマートフォンのメディア接触時間、移動の促進、交流の可能性は、マーケターにとっても注目すべきことだと言えます。

それはゲームとして捉えるよりも、スマートフォンで生活する人のリアルな行動を変えるものとして考えるべきでしょう。

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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