※本記事は6月8日・9日に宣伝会議主催のイベント「インターネット・マーケティングフォーラム2016」内で行われた講演をレポートしたものです。
千葉県の北西部、東京・秋葉原からつくばエクスプレスで25分弱の場所に位置する流山市。「都心から一番近い森のまち」として都心へのアクセスの良さに加え、住みよい街であることをかねてからアピールしてきた。少子高齢化の加速する国内では珍しい話であるが、同市は常住人口が右肩上がりで増加している。2005年4月は15万2500人だったが、2016年5月には17万8000人にまで拡大しているのだ。
流山市のマーケティング課でメディアプロモーション 広報官を務める河尻和佳子氏はその理由について、「『母になるなら、流山市。』というスローガンのもと、子育て世代にターゲットを絞りPR活動を実施した効果もあり、ここ数年で子育て世代と子どもの数が急増しました」と語る。
ツールを絞って情報を届ける
民間企業で14年間、営業やマーケティングを担当していた河尻氏は、流山市の市外向け広報を一手に引き受ける。一般公募の任期付職員として着任してから、住民誘致のためのPRに使うデジタルツールを公式サイト、Facebook、Twitter、そして駅のデジタルサイネージの4つに絞り込んだ。
自治体の公式サイトについて河尻氏が感じていた課題は、情報が散在し欲しい情報がどこにあるか探しづらいということ。毎日多くの情報があふれている状況では、結局埋もれた情報が増えてしまう。「情報を4 つのデジタルツールでの発信に絞り込み、各ツールに適した情報を、適した形で発信するようにしています」と語る。
ゴールはシビックプライド向上
特に子育て世代に関心が高そうな情報を積極的に発信するほか、Facebookページで最も力を入れているのが流山市で活躍している人にフォーカスした投稿だ。これにより市民発の情報のシェアが増え、SNS上で市外の人へ話題が広がるという効果が見込める。「簡素な情報よりも、『流山にはこんなすごい人がいるんだ』と感じるような投稿はシェア率が高く、誰かに知らせたくなるような投稿を心掛けています」。
とはいえ、単に「いいね!」数や拡散件数の増加ばかりに注力しているわけではない。PV数やシェア数、視聴回数といった指標はあくまで目安として捉えているそうだ。「最終的なゴールは流山を誇りに思う気持ち、すなわちシビックプライドの熱量を高めること。流山を好きになって、最終的に無償で自ら市を宣伝してくれるアンバサダーのような存在になってもらうことが理想ですね」。
デジタル活用のみならず、公式サイトやSNSと駅貼り広告、リアルイベントを連動させるといった工夫も凝らしている。デジタルとリアルの相乗効果によって、街づくりや地域の活動を「自分ごと化」させることが市民の心を捉えるカギとなっている。
続きは、8月1日発売の『広報会議』2016年9月号をご覧ください。本誌では、以下の内容についても聞いています。
「広報会議」2016年9月号
巻頭特集「PRになぜクリエイティブが必要か」
広報部門には多数のファクトがあり、まさにコーポレートストーリーやコンテンツの宝庫。
これらはクリエイティブの力や編集力を掛け合わせることで、PR効果を最大化することができます。
これからのPRに必要なスキルやノウハウ、成功例とは?
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もっと左脳でストーリー開発を!
- 嶋 浩一郎(博報堂ケトル 代表取締役社長)
「ファクトづくりこそPRパーソンの得意技」
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【貝印「FACT magazine」】
- 世界の拠点ごとにガイドブック制作「100年企業のプライド」発信
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【スキル①】 コーポレートストーリーの構築
- 企業の強みを象徴的に伝える方法
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【赤城乳業「ガリガリ君値上げ」篇】
- 「カンヌのグランプリも狙っていた」値上げ報道の論調を決めた動画
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【スキル②】 プレスリリースの作成
- メディアに社風と熱量を届けよう
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【ヤフー「OHAYO!」】
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【スキル③】 ビジュアルコミュニケーション
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【スルガ銀行「井伊部長の温泉グルメ探訪」】
- 「惜しい!」企業発コンテンツを「欲しい!」に変えるには?
岡本純子(コミュニケーションストラテジスト)
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【国土交通省】
- 「ダムマニア向けコンテンツ」でファン獲得、政策へ理解を
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【増える企業発ウェブマガジン「制作体制と成果は?」】
- 資生堂/アサヒグループ食品/ラクス/エムオーテックス ほか
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OPINION
- ネイティブアドとは何か?「PRか、広告か」という争点
片岡英彦