同日公開の『変態仮面2』でパロディに・・・
澤本:真摯に撮った映画、僕も見ましたし、とてもいいんですけど、永井さんは『世界から猫が消えたなら』という素晴らしい映画の裏にある『変態仮面2』のキャッチコピーに怒ってましたね(笑)。
権八:裏にある『変態仮面2』って何ですか?
永井:『変態仮面2』が同日公開で、「世界からパンティが消える」ってキャッチコピー。
一同:笑
永井:ふざけんなよと。
権八:同じ東宝で?
永井:あっちは東映。
中村:すごい、それまたアナーキーというか。映画公開前からパロディ。
永井:そう、被せてきている。僕は思うけど、被せられたほうは認められているというか。パロディされるほうが一流というか。ただ、まさか『変態仮面』に・・・。
中村:『せか猫』のほうは『変態仮面』のパロディやらないですからね。
永井:やらない。被ったりできないからね。しかも、『変態仮面』と『せか猫』の主人公は以前、ドラマ『天皇の料理番』で兄弟役をやっていて、お兄ちゃんが変態仮面になって・・・。
一同:笑
中村:あと僕が気になったのは、映画にするときに原作と大きく違うのは、そこに関わった人達の物語というか、思い出も消えるみたいな部分が大きく変わっていて。それは監督もそっちのほうがいいと考えたからなんですか?
永井:映像的には、携帯が消える、電話が消える世界ってパッと見わかりづらいじゃないですか。車が消えた世界も、映像だとわかりづらいんですよ。車が単純に通ってないだけに見えるから。それでどうしようと。しかも、それをやったところで主人公が本当に追い込まれるのかと。
小説は川村さんの視点で淡々と語られるエッセイみたいな部分があるので成立するんですけど、映画は惹き込まなければいけない。この後、主人公はどうなっちゃうんだろうと。そこを非常に悩んで、ただ消えるだけだと主人公は何も喪失していないんじゃないかということで、思い出も消えれば彼は本当にいろいろな選択に悩むことになるだろうと。
ちょっと映画的な要素が出てきたんですよね。そこで初めてストーリーがガッと動き出して、脚本家とプロデューサーとみんなでつくりだしたと。そこを開発するまでは大変だったし、みんな苦しんでました。最初に僕が見た脚本に悪魔は出てこないですからね。鏡の中にいる人と自分が話すみたいな。かなり苦戦して、いろいろな方向にいってましたから。
澤本:どうでした、第1作で僕が『ジャッジ!』をやっていただいたときと今回ではつくり方や過程は違いましたか?
永井:そうですね。『ジャッジ!』のときは何から何まで初めてだったので、探り探りやっていた部分があるんですけど、今はもうわかったので、だいぶ人に対する指示や判断が早くなったおかげで無駄がないですね。映画って、あれもこれも撮ってみたいとなると、後でかなり自分の首を締める部分があるので。
澤本:僕は『ジャッジ!』のときに撮影現場にあまり行かなかったんですよ。行くと、いつものCMの癖でちょっとこういうのも撮ってくださいって言っちゃうじゃない。
権八:そうですね。違うセリフのバージョンとかね。
澤本:ニュアンスがと。あれをやっちゃうと時間がないのもそうだけど、後で困るという風におっしゃってましたね。編集がCMのように15、30秒だとそこそこね。
権八:戻れるしね、すぐ。
澤本:映画はそれがなかなか難しいんだなと。
永井:2時間のそこのセリフ違いで3バージョンってわかんなくなるじゃないですか。でも、15秒だとセリフ違いで一気に内容の面白さが変わったりするので、そこがCMの面白さでもありますよね。CMはかなり磨かれてますから。
澤本:だから僕は行かなかったんです。
永井:そうなんですよ。すごいと思います。本当は来たいだろうし、気になる部分ってたくさんあると思うんですよ。澤本さんは完璧主義だから。だけど、そこはあえて僕が行ったらよくないと言って、冷静な目で見てという。男らしかったですよ、シティーハンター。
澤本:シティーハンター(笑)。