未来につながるデザインを考える1日
「OSAKA DESIGN FORUM」は、大阪芸術大学デザイン学科の学生が企画から運営まですべてを行い、「物事を論理的に組み立てる思考」を実践的に学ぶ場となっている。
著名なデザイナーによる講演会や、大阪芸術大学デザイン学科生の作品展示などを行い、毎年1000人以上の来場者がある。
10年目を迎えた今年のテーマは、「goon」。KIGIアートディレクター 植原亮輔さん、渡邉良重さん、SUPERMAMA プロダクトデザイナー エドウィン・ロー、そして同大学卒業生である細川剛さん、CITIZENチーフデザイナー 三村章太さんほか、喜多俊之教授らが登壇し、トークセッションを行った。
冒頭で、喜多教授はこの場所でフォーラムを続けている背景と思いを語った。「いま世界ではデザインが未来の鍵を握っていると言われています。日本からさまざまなクリエイターが誕生し、社会の中でデザインの重要性が問われるようになり、このフォーラムが次の時代を受け持っていくという、開始当初の思いにたどり着いたと感じています」。
トークセッションに登壇した一人、細川剛さんは同大学卒業生で、博報堂で活躍するアートディレクター。本年度ADC賞も受賞した注目のクリエイターである。
細川さんは自身がこれまで手がけた仕事を事例に、プレゼンテーションを行った。そもそもそこにはどんな課題があったのか。そして、デザインでどのように解決していったのか、細川さんは手がけた事例を解説した。
その一つ、日産がJAXAの協力のもとに行った「宇宙たんざく」は、子どもたちが未来に向けて抱く夢や願いごとを募集する「星に願いを!」プロジェクトとして実施された。
全国から集められた願いごとを、「宇宙たんざく」としてサイト上で公開。願いごとは国際宇宙ステーションに届けられ、古川聡宇宙飛行士によって仙台七夕まつりの夜に読み上げられた。これは2011年の震災後、「東北の子どもたちに元気と笑顔を届ける」という課題解決に向けて企画されたものだ。
「星に願いを届けるのであれば、より星に近いところがいいのではないかということが企画の発端。Web、告知ツール、イベント、オリジナル絵本の装丁まで、トータルでデザインを手がけました」。
細川さんはまとめとして、次のように話した。「どんな仕事にも、必ず課題がある。それをデザインでどう解決するか。その戦略と具体策を考え、世の中に出していくことが、アートディレクターの仕事。いま社会のさまざまなところに課題があり、デザインの力が求められています。僕自身、さまざまなプロジェクトを通して、そのことを痛感しました。これからデザインの仕事をする人は色や形だけを考えるのではなく、どう社会と向きあうか。その姿勢が問われてくると思います」。
フォーラムの最後は、同大学 清水柾行客員教授の進行のもと、登壇者全員によるセッション。ここでは表現のディテールからものづくりに対する姿勢、社会との向き合い方まで、さまざまな視点からデザインが語られた。
参加者にとって、この日は未来につながるデザインの可能性を存分に感じる1日になったのではないだろうか。
編集協力/大阪芸術大学