- PVやUUの計測を厳密化し、無価値なアクセスやユーザー(の重複など)を排除して精度を高める
- PVやUUに代わって、メディアの質的な価値に注目する
「1.」の意味は明瞭だろう。一定の時間や読まれた記事量が基準を下回るものは、実際の閲覧とは見なさないなどの判定が常識化しつつある。また、複数デバイスを利用するユーザーが多くなり、ユーザー数の重複排除もポイントとして認識されるようになった。
だが、ここで重要なのは「2.」の質的価値への視点だ。
規模から質への転換は可能か
もし、“質の高い”コンテンツに出会った時、ユーザーはどう振る舞うだろう?
まず、記事であれば熟読し、完読する。動画であれば完視聴するだろう。というわけで、質的指標としては、ファーストビュー(スクリーンに最初に現れるコンテンツの冒頭部)のみを表示して離脱するようなケースを計測上排除したり、逆に記事のフッターまでスクロールしたケース(動画では完視聴)を計測対象としたりするなどが質的な計測へのアプローチとなるだろう。
あるいは、そのコンテンツ上での滞在時間の長さが重要な指標となるかもしれない。
次に考えられるのはユーザーの「行動」だ。ある製品の批評記事が優れていれば、その製品の情報ページへとユーザーを遷移させる力を発揮するかもしれない。もちろん、ECサイトへと誘導できる可能性もあるだろう。
ユーザーが再訪する頻度も重要な質的な計測指標となる。良質なコンテンツと出会ったと感じるユーザーは、次もそのメディアで情報を得たいと行動するはずだ。さらには、お気に入りとなったメディアやコンテンツを、ユーザーは知人に紹介する可能性もある。「コンテンツの共有=品質の高いメディア」という等式は、必ずしも真とは言えないが、その蓋然性は高い。
例えば、英国『Financial Times』や同『The Economist』などは「(ユーザーによる)注目度指標」として、一定以上の滞在時間、再訪率といった質的評価を採用している。広告価値の指標についても、すでに数年前から5秒以上の視聴を“ビューアブル”として保証する基準を打ち出している(FT.com「Financial Times、“時間当たり単価”型広告指標を投入」参照)。
ユーザーとの関係性を表すものとは
質の高さを重要視するメディアの真の狙いは、良質なユーザーの信頼や嗜好をがっちりとつかみ、彼らの行動と関心を自らのメディアに定着させることにある。これにより、長い時間の滞在や高い訪問頻度、そして活発にコンテンツに反応するなどの「ユーザーとメディアの良好な関係」が得られるだろう。
だが、すぐに理解できるように、「質の高さ=ユーザーの活発な行動」となるわけではない。
知名度の高い(質の高い)情報源と、顔見知りや一般人などからの情報のどちらを信頼して行動するかという選択で、多くの人が後者を選択するという調査もある(アドビシステムズ調査「ネット上の情報、情報源で大きく異なる『信頼できる』」参照)。
言い換えれば、メディアがユーザーにとって親密で心地よい場であれば、ユーザーはより活発な行動をする可能性がある。ユーザーへの働きかけがあり、ユーザーの参加余地のあるメディア。このような双方向性が、質の高さ以上に重要な指標となりえる可能性を、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアは教えてくれる。
このような、いわば“第三のメディア価値”を、「エンゲージメント」と総称することが多くなっている。エンゲージメントとは、端的にいえば“(ユーザーからの)関係性を示す指標”と理解できる。むろん、品質的アプローチも、良好な関係性(たとえば、「信頼」)を築くひとつの要因だろう。
“関係が近い”“親しみがある”“居心地が良い”などは、“信頼できる”と同じように重要な関係性たりえる。高いエンゲージメントのメディアに、ユーザーは頻度高く訪問し、長く滞在するだろう。さまざまな行動を臆せず行うはずだ。
そこで、メディアの価値をエンゲージメントの視点で計測するには、これらアクティブな行動(反応)を収集して指標化することになる。Facebookにコンテンツをシェアする、「いいね!」する、Twitterでツィートする、リツィートする、あるいは記事にコメントするなど、それぞれの行動を重み付けしながら計測することは、エンゲージメントを測る第一歩となる。エンゲージメントを計測する数々の指標については、「ユーザーの『エンゲージメント』(入れ込み具合)を計測する–ソーシャルメディアマーケティングの効果測定」を参照。