メディアはどうすれば「PV」や「UU」といった「規模的」指標から脱することができるのか

本格的な分散環境下でメディア価値はどうなるのか

さて、ようやくメディアの価値を論じるスタートラインに立つことができた。

ここで、メディアの最新動向を見回してみると、新たな課題に直面することとなる。昨今では、メディアの成長戦略上、プラットフォームと呼ばれるプレーヤーとの連携が重要性を増している。端的には、FacebookやGoogle、そしてTwitterやSnapchatらを介したコンテンツ配信である。

本コラム「ディスプレイ広告で稼ぐ時代が終わる? スマホのユーザー体験が突きつける現実」でも触れた「分散メディア」のトレンド下で、各メディアはどのようにユーザーとのエンゲージメントを指標化し、それを高めていけるだろうか。

分散メディア環境下では、メディアは、ユーザーに対して一つずつのコンテンツ(記事)でしか出会えない。さらにいえば、複数のコンテンツを擁したパッケージとしてのメディアというブランド性をユーザーに与えにくい。

そのような分散メディアのトレンドを先導し、自らのメディア価値創造を果敢に試みているのが、『BuzzFeed』だ。同発行人のDao Nguyen氏は、『BuzzFeed』の大胆な発想とどのような実践を行っているかを公開しており、ぜひ見てほしい(「BuzzFeedはいかにデータを収集し、分析しているのか」)。

同社が試みるのは、各種プラットフォーム上でBuzzFeedが生み出したコンテンツの一つひとつがどう読まれ、どう拡散し、その拡散が複雑に関係しあって巨大な影響圏を形成していくかを追跡し可視化できる技術的な仕組み(同社はこれを「POUND」と呼ぶ)の構築だ。

図3 BuzzFeedは、POUNDの手法でコンテンツの拡散過程を、同社データサイエンティストが可視化

自らのコンテンツが各種プラットフォーム上でユーザーにどう読まれ広まっているかを可視化できれば、それもまたユーザーへ提供している価値として計測できる。自社ドメインだけがメディアの価値を創造する場ではない、というわけだ。

実際、BuzzFeedはPOUNDを通じて、ソーシャルグラフを介在してコンテンツが拡散することがエンゲージメントにつながることを説明できるという。

駆け足で、現代のメディアが直面する“メディア価値の変化とその客観化”という課題に言及した。ここには、メディアが有する多様な影響力と、ユーザーとの関係性の歴史が凝縮している。

目先の課題にとらわれることなく、未来まで届く検討を進めなければならない。

【参照資料】
PVはジャーナリズムと矛盾? 習慣化や滞在時間も重視 デジタルメディア生き残りへ、日経電子版とYahoo!ニュースが追う数字は
ユーザーの「エンゲージメント」(入れ込み具合)を計測する–ソーシャルメディアマーケティングの効果測定
Introducing Pound: Process for Optimizing and Understanding Network Diffusion
Financial Times rolls out ‘cost per hour’ advertising metric
ネット上の情報、情報源で大きく異なる「信頼できる」

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藤村 厚夫(スマートニュース)
藤村 厚夫(スマートニュース)

90年代を、アスキー(当時)で書籍および雑誌編集者、および日本アイ・ビー・エムでコラボレーションソフトウェアのマーケティング責任者として過ごす。

2000年に技術者向けオンラインメディア「@IT」を立ち上げるべく、アットマーク・アイティを創業。2005年に合併を通じてアイティメディアの代表取締役会長として、2000年代をデジタルメディアの経営者として過ごす。

2011年に同社退任以後は、モバイルテクノロジーを軸とするデジタルメディア基盤技術と新たなメディアビジネスのあり方を模索中。2013年より現職にて「SmartNews(スマートニュース)」のメディア事業開発を担当。

藤村 厚夫(スマートニュース)

90年代を、アスキー(当時)で書籍および雑誌編集者、および日本アイ・ビー・エムでコラボレーションソフトウェアのマーケティング責任者として過ごす。

2000年に技術者向けオンラインメディア「@IT」を立ち上げるべく、アットマーク・アイティを創業。2005年に合併を通じてアイティメディアの代表取締役会長として、2000年代をデジタルメディアの経営者として過ごす。

2011年に同社退任以後は、モバイルテクノロジーを軸とするデジタルメディア基盤技術と新たなメディアビジネスのあり方を模索中。2013年より現職にて「SmartNews(スマートニュース)」のメディア事業開発を担当。

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