初監督作品では会社から「こんな映画つくっていいと思ってるの?」と怒られた!(ゲスト:細田守さん)【後編】

ファミレスで描いている細田監督だからこそ「気にすること」

細田:そうです、今もやってますけど(笑)。ファミレスの斜め横の家族はどう見るかということは気になりますね。夜中に描いたラブレターみたいになっちゃうと公共的ではないから、斜め横の俺とは全く関係ない家族に読ませることができるかということは考えます。読ませられないと思ったら、変えなきゃいけませんからね。

澤本:そこに1個、大きなフィルターがあるんですね。

細田:ファミレスに来ている方々が。

澤本:ファミレスに来ている家族にこれを見せて、「気持ち悪い」と言われるかね。

中村:初心者的な質問で恐縮ですが、物語を書かれるときはいきなり絵コンテから入るわけじゃなくて、プロットの組み立てに時間を要したりするんですか?

細田:やりますね。再構成したり、文字や論理だけで組み立てるものだけじゃなく、映像的な別のサブプロットみたいなものを仕込んだり、いろいろそういうものがあって絵コンテになっていきますから。じつは今、ちょうど次の作品のシナリオの真っ最中なんです。

中村:次の作品! 断片的に言える部分があればぜひお願いします!

細田:断片的には・・・今までの4作とは別の切り口というか、こんなことが映画で成り立つのかみたいな。そういうものだけど、「面白い」となるといいと思って頑張っています。こんな何年も前から告知をしてどうするんでしょうか。できるのは何年も先ですけど(笑)。

澤本:細田さんの映画が少なくとも頭の中では制作されてきていて、もうすぐ見られると。

細田:そうなんですよ。今本当につくってるところです。アレもしなきゃ、コレは削らなきゃと。いろいろ、そんなことばっかりを延々と。

澤本:そんなお忙しいときにラジオに出ていただいてありがとうございます。

細田:内容をそのまま言っちゃうんじゃないかと(笑)。そういうわけにはいかないですけど。

澤本:『サマーウォーズ』は長野県上田市が舞台ですよね。細田さんと関係のある場所だから、身近なところから映画をつくってらっしゃるという印象が強くて。そこが見る側にも近さというか、入りやすく感じるんじゃないかといつも思ってるんですけど、細田さんがテーマを選ぶときは「身近なところから選ぶ」というのがベースとしてあるんですか?

細田:そうですね。それは強いですね。昔は外国の映画監督や歴史的な作品に憧れていたんですよ。だから、影響を受けるものが遠いところにあるものだったんです。作家のつくる態度も含めて影響を受けていましたが、自分が結婚したり、子どもが生まれたりすると、身近なものから影響を受けるようになりました。

自分でもそんな風に影響を受けるなんて思ってなかったんですよ。それが昔の偉人よりも、身近にいる人から得ているもの、発信しているものがよくなっちゃって。というか、良いも悪いもなく、影響を受けざるをえなくなっちゃうんです。身近なものをつくろうというんじゃなくて、そこから逃れられないというのが正直なところですね。だから自分でもビックリしちゃいます。

中村:ご結婚されたり、お子様ができたりというのが『おおかみこどもの雨と雪』や『バケモノの子』のテーマに繋がっているところがあるんですか?

細田:ありますね。たとえば、『おおかみこども』は母親が亡くなったことが影響しています。『サマーウォーズ』の仕上げ、ダビングをやっている時期に亡くなったんですが、映画の仕上げの真っ最中だから、そうそう見舞いに行けなくて。何とか長く生きてほしいと思ったけど、亡くなっちゃうと、どうにも手出しができないじゃないですか。

そうすると、そこから後悔の日々で。あのとき悪いこと言ったな、冷たい態度をとって申し訳なかったなって。そういうものが溜まってきちゃうんですよ。息子としては親の幸せに貢献していないという気持ちになって、「本当にごめんなさい」って。そういうことを死んでから思うなよ、生きているうちに「ごめんなさい」を言っておけよと思うけど、そうならないのが世の中で、そういう後悔の気持ちみたいなものがあの映画に出ていますね。

つまり、自分も育ててもらった富山という場所で、母親がいかに子どもを育てたかということを息子として、自分が子どもとして、そこを検証するような映画にならざるをえない。じゃないと母親に申し訳ないというか、死んでから「ごめんなさい」なんて図々しいんだけどさ。そういうところが理由としては大きいですよね。

次ページ 「映画をつくることは価値観に対する挑戦である」へ続く

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