最強のマーケティングは“サスティナブル”にある!

従業員満足が顧客満足を生み出す

その結果、リーダーや上司は、理念に沿って従業員や部下の喜びを求め、制度や体制を整えるとともに活動を支援し、従業員のやる気を生み出す。一方、従業員は、理念に沿って顧客満足を目指して活動することで、顧客から「ありがとう」という言葉や感激の笑顔を手にすることができる。接客した彼ら・彼女たちは、顧客から支援され、「あなたのためなら……」という励ましの気持ちをもらったことで、「従業員満足」の感情が芽生える。

接客を生業とするビジネスでは、顧客の笑顔や喜びが従業員自身の感動につながるといわれるが、私は29年にわたる資生堂勤務の時代にも、このことを痛感した。

また、企業倫理委員会で社外委員を務めている西武ホールディングスも、同じく顧客満足を重視している。西武ホールディングスは、2004年に東京証券取引所から上場廃止を宣告され、約10年の歳月を経て再上場を果たしたが、その原動力となったのがグループビジョンの「でかける人を、ほほえむ人へ。」である。西武鉄道や伊豆箱根鉄道などの交通事業、プリンスホテルなど宿泊事業、その他遊園地などの観光事業など、多くの顧客に感動を提供するビジネスだ。

これとは逆に、従業員の声に耳を傾けず大切にしない会社は、顧客満足を追求することもなく滅びる運命にある。数年前の船場吉兆のような「倒産」という悲惨な事例をみても明らかだ。パワハラなどが横行するブラック企業も従業員が満足することはありえず、会社の成長はない。

サスティナブルが、善循環につながる

顧客満足が従業員満足を生み出せば、従業員は経営理念を目指す活動に一層励むことができる。こうした会社は口コミや、近年ではインターネットの評判なども高くなり、地域住民や社会全体から「良い会社」との声が高まり、さらに顧客が集まることとなり、会社に対する社会の満足が向上する。

従業員、顧客、地域社会の満足を向上させる「経営理念の善循環スパイラル」

つまり、「経営理念をもとに、満足を享受した従業員が顧客満足を生み出し、それが社会全般に広がり、社会の満足に結びついていく」という構図が生まれる。 この構図に喜びを感じた従業員は、さらなる顧客満足の活動に精を出し、この善循環の輪が拡大していくこととなる。

実はこの「サスティナブル」こそ、事業の発展につながる最強のマーケティングということができるのだ。

水尾順一(みずお・じゅんいち)
駿河台大学経済経営学部・大学院総合政策研究科教授、博士(経営学)。

1970年神戸商科大学(現・兵庫県立大学)卒業、資生堂を経て1999年駿河台大学へ奉職、現在に至る。アデランス社外取締役、西武ホールディングス企業倫理委員会社外委員。東洋大学経営学部兼任講師、日本経営倫理学会副会長、経営倫理実践研究センター首席研究員、2010年ロンドン大学客員研究員。ICMCI(国際公認経営コンサルティング協議会)認定国際資格「CMC」 取得、専門はマーケティング倫理、CSR、コーポレートブランド経営など。

 

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