データマーケティングを“広告文脈”だけで語らない
マーケティングにおけるデータ活用の重要性が言われるようになって久しい。アドテクノロジーの進化を背景に、Web広告領域を中心にデータ活用マーケティングは急速に浸透しつつある。
この状況について、ライオンでデジタルマーケティングを推進する中村大亮氏は、データ活用が“広告文脈”だけで語られがちであることが、日本のマーケティング業界の課題だと話す。「当社では、2014年に構築した自社DMPの活用を段階的に進めています。第1フェーズは、広告配信への活用。オウンドメディア『Lidea(リディア)』のアクセスデータを基に設定したセグメントに対し、広告を配信しています。第2フェーズに入った現在は、広告に留まらず、マーケティング領域全般においてデータを活用することを目指しています。例えば、Lideaのアクセスデータから明らかになった『長期休暇中に、羽毛布団や毛布などの大物洗いをする』という消費者ニーズにヒントを得て、今年のゴールデンウィークには、一部の販売店様に大物洗いの売り場提案を行いました。このように、マーケティング部門と営業部門が連携する動きにもつながっています。データの活用目的を、マーケティング全体へと広げることの意義を感じました」。
マーケティング業界全体で、データ活用の範囲を広げていくためには、マーケターの意識改革はもちろんのこと、データを活用しやすい環境の整備も欠かせない。Supership 広告事業本部長の宮本裕樹氏は、「マーケターが必要としている多種多様なデータを蓄積でき、またそれを使いやすい環境を整えることが必要だと感じています」と、ソリューション企業の対応が急務だと話す。
オーディエンスデータの活用で真のユーザー像を捉える
マーケティングにおいて活用できるデータにはさまざまなものがあるが、なかでも昨今、マーケターからの注目が高まっているのは、メディアをはじめとするデータ保有企業が持つ「オーディエンスデータ」だ。
「Lideaで取得できるのは、お客さまの一側面を示すデータにすぎません。他のメディアを閲覧しているときの行動データと、自社が保有するデータとを連携させることで、お客さまの姿をカスタマージャーニーとして捉えられるようになると思います。『お客さまを知る』ことがマーケティングの起点ですから、オーディエンスデータの活用は、今後のデジタルマーケティングを進化させていく上で欠かせません」(中村氏)。
ただ、その活用にあたっては、データ保有企業側の意識・体制が、障壁の一つとなっている。自社が持つデータをどう活用すべきか方針が定まらず、具体的な行動を起こせていないメディアが少なくないのだ。また、取得したデータを加工・保管するルールがメディアごとに異なり、マーケターにとって使いにくい状態であることも課題の一つだという。
「必要なデータを必要な形で取得できるよう、データ整形には業界標準があってもいいかもしれません。マーケターが『自分たちにとって必要なデータはどんなものか』を明確化し、それを基に、各メディアが共通フォーマットでデータを整備する。これが、業界を挙げてデータ活用を推進していく上で必要なのではないでしょうか」(中村氏)。
こうしたなか、マーケター/データ保有企業の双方が、オーディエンスデータの活用を進めるためのサポートを行っているのがリンクシェア・ジャパンだ。同社では、楽天が保有するデータと、数百万媒体にのぼるアフィリエイトメディアのデータを連携させ、カスタマージャーニーの可視化や、より精度が高くリーチの広いオーディエンスターゲティングを実現しようとしている。
同社でこの取り組みを推進している飯野正紀氏は「楽天の各種メディアのデータも、ユーザーの一側面のデータにすぎません。より多くのユーザーのカスタマージャーニー可視化や、デバイスを横断した精度の高いオーディエンスターゲティングを実現する上で、モバイル領域のオーディエンスデータやスマートフォン向け広告事業に強みを持つSupershipと密に連携しています。同社の協力で構築した独自DMPを基盤に、こうした“データの価値化”の支援を、多くの企業に対して行っています」と話す。
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