FRACTAブランディングスクール【第2回】自社のブランディング全体を見渡して、独自の指標を設計する

まずはブランディング活動を一覧化する

では具体的に、どのように評価指標を設計すればよいのか。松岡氏は一つの方法として、「カスタマージャーニーマップ」を活用する方法を紹介した。「カスタマージャーニーマップ」とは、顧客が商品を認知した後、購入、さらに商品評価など購入後の行動に至るまでの一連の行動を時系列で把握し、一覧化するもの。

「指標を設計するために新しい知識を必要としないので、お勧めです。一見、当たり前のことばかりを書いてあるように見えますが、この『カスタマージャーニーマップ』を“つくり込む”ことで、ブランドの実態に即した、使いやすい指標を立てることができます」。

一般的な「カスタマージャーニーマップ」との違いは、基本的な項目(シーン・チャネル・タッチポイント・行動・課題等)の他に、ブランドに対する顧客の「ネガティブポイント」や「ポジティブポイント」、「最も望ましい顧客のアクション」や「ブランドが用意しておくもの」などの項目を加えていること。

これらの項目を充当していくことで、最終的に「ポジティブ指標」と「ネガティブ指標」を導き出すことができる。

ここで重要なのは、「何のための指標か」を定め、指標化のための「ターゲットとペルソナ」を設定することだ。松岡氏は具体例を用いながら、ターゲットとする人々のニーズやウォンツを知るためのペルソナを設定し、それをもとに「カスタマージャーニーマップ」を作成することで、各フェーズでブランディングの達成すべき指標が可視化されるとともに、施策の見直しや、さらにはコンセプト自体の見直しも可能になると説明した。

決して、NPS®など従来の指標に基づく評価が不要ということではない。そのようなマクロな視点の調査にミクロな視点の指標を組み合わせていくことで、自社ブランドに合った形でブランディングの成果を測ることができる。そして松岡氏は、この指標づくりに「ECサイト」が貢献することを強調した。

「顧客とのタッチポイントであるECサイトには、顧客の購買内容・履歴といった購買情報や属性情報など、効果測定に利用できるデータがたくさん詰まっています。それぞれの数字が、ブランディング全体の中でどのような意味を持つのか。『カスタマージャーニーマップ』を用いてそれらを紐づけることができれば、ECサイトのデータは、ブランディングの効果測定においても非常に有用なものです」と結んだ。

経営者にとってわかりやすい「評価」を

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ブランドのあり方・全体像を一覧化し、ブランディングの成果を測る指標を導き出していく。この考え方と具体的なプロセスを解説した松岡氏の講義に続いて、河野氏はより現実的な問題を投げかけた。

「かつては、テレビCMなどマス広告を通じて、ブランド価値をインパクトのある形で訴求できれば良かったのですが、現代のユーザーは、ブランドが持つ本当の価値を見抜く目を持っています。さらに、短期的に売上のようなわかりやすい効果が出にくいことから、上司や他部門の理解・協力が得られず、社内の足並みが揃わないという声もよく聞きます。説得力のある戦略を展開しなければ、ユーザーの心を動かすどころか、社内すら突破できないのが現状です」。

「カスタマージャーニーマップ」などを用いて、ブランディング活動の内容・プロセス・達成指標をわかりやすく伝えることが重要で、そこでは「限られたリソースで最大限の効果を出している」ことを強調することが重要だと河野氏は呼びかけた。

このように、ブランディングを推進していくために社内を動かすには、取り組みの評価を、経営者視点で考える必要がある。

「どこまでの投資が、いつまで許されるのか」というバーンレートを考慮しながら、ビジネス上の成果に貢献していることを可視化しないと、プロジェクトが止められてしまうリスクがあると話す。

とはいえ、成果が出るまでに一定の時間がかかるケースがほとんどのブランディングで、説得力を持って経営者にその活動を説明し、理解を得るにはどうしたら良いのか。一つの有効な方法として河野氏は、ブランド定義とオーディエンス定義、そして「どこ」で戦うかを可視化する「ブランディング・キャンバス」(図)の制作を挙げた。

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「ブランディング・キャンバス」は、ビジネスモデルの企画のためのツール「リーンキャンバス」をベースに、ブランデ ィングに特化させた形の戦略計画書。

さらに、効果の可視化のためには各種ツールを上手く活用することが不可欠と話し、「使いやすさ」の観点から、ブランディングの効果測定に使えるサービスや、その活用方法を紹介した。

企業活動である以上、適切な指標とそれに基づく評価なくして、ブランディングへ投資することは難しい。長期的な視点で消費者との信頼を構築していくためにも、適切な指標づくりが不可欠だとまとめた。

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