「WIRED」創刊編集長ケヴィン・ケリーが語る、30年先の未来に起こる重大な変化とは?

AIは第2の産業革命を起こす

AIの二つ目のメリットは、われわれの社会に“第2の産業革命”を起こしてくれることです。“第1の産業革命”は約150年に生まれた「人工的な動力」でした。

農耕社会では、人間や動物の筋力、あるいは自然の力を使うことでさまざまなものを生産してきました。人間や動物の力は弱い上に生産体制が限られ、巨大なものを生産するためには非常にゆっくりとしたプロセスが必要だったのです。

そこで私たちは、蒸気や電気、化石燃料を使うことで「人工動力」をつくりました。その結果、スイッチ一つで250馬力もの速さの車を動かすことができるようになりました。さらには高層ビルを建て、道路や鉄道、工場を建設し、そして冷蔵庫やテレビをつくったわけです。こうした一つ一つの発展が何百万倍も積み重なることで産業革命が起こり、私たちの生活を一変させました。

第1の産業革命の結果、全ての家庭や住宅や農場に電気が通じました。自分で電気を生産する必要はなく、コンセントから得られるようになったのです。つまり、電気がコモディティー化したことが、イノベーションの源泉となりました。

例えば、あなたが農家であれば、これまでの手動式ポンプに電気を加えることで「電気式ポンプ」を生み出せるようになりました。何らかの手動式のものに人工動力を加えることで、自動化されたものができていくのです。

第2の産業革命は、この電気ポンプをさらに進化させて、AIを加えます。そうするとスマートポンプができるでしょう。先ほど、自動車は250馬力とお話ししましたが、それに対して今回はAIを加えることで「250頭脳」と表すことができるかもしれません。この250の知能と馬力を足したものが「自動運転車」です。つまり、第1の産業革命と第2の産業革命が組み合わさったのです。

今後、新たに生まれるスタートアップ企業のビジネスモデルを表す数式はシンプルでしょう。それは、何かXを選んで、それにAIを加える「X+AI」という数式になるからです。

例えば、靴や椅子にAIを加えるとどうなるか考えてみてください。あるいはタクシーにAIを加えたらどうなるでしょうか。Uberになるかもしれません。これをさまざまな分野で繰り返し行えば、どれほど大きな効果があるかがお分かりいただけると思います。

次ページ 「未来はAIと人間が共同作業を行う」へ続く

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