「WIRED」創刊編集長ケヴィン・ケリーが語る、30年先の未来に起こる重大な変化とは?

未来はAIと人間が共同作業を行う

AIをボディーに搭載したものがロボットです。これまでの旧式ロボットが工場で使われる場合は、その周りにケージが作られました。ロボットがあまりに愚鈍でセンサーもないため、人を感知することもできず殺傷してしまう危険性があったためです。しかしAIが搭載されたスマートな産業ロボットは、人間を感知することができ、傷つけないように配慮します。

さらに重要なのはプログラミングをしなくても、スマートロボットには「こういう仕事をやってほしい」と見せれば、それをまねしてくれる能力があるということです。さらに、正しく実行できるまで自律的に学習してくれます。

こういったスマートなロボットは、人と協力することができます。これが重要な点です。それによって、私たちの仕事の定義も変わるでしょう。私たちの作業の多くがなくなると同時に、ロボットが新たな職をつくってくれるのです。

ロボットが私たちから奪う仕事というのは、効率性が重要となる仕事です。効率性はロボットの得意分野であり、人間は得意でも好きでもありません。一方で、私たちが得意な仕事とは効率性が重要でない仕事で、まさにイノベーションに関わるものです。

というのもイノベーションは非常に非効率な作業だからです。たくさんの失敗がなければ、イノベーションは実現できません。芸術やアート、人間関係も非効率なものです。

世界的なチェスのチャンピオンだったガルリ・カスパロフは、AIが搭載されたスーパーコンピューターに試合で敗れました。ただ彼は、もし自分がAIと同様に、リアルタイムでチェスの過去の打ち手のデータ全てにアクセスできていれば、勝てたはずだと気付きました。そこで彼はAIと人間が一緒にチェスをするという新しいリーグを立ち上げました。

そこではAIを相手に人間が自力でプレーしてもいいし、AIと協力してプレーすることもできます。彼はこうしたAIと人間が協力するチームを「ケンタウルス」と呼びました。現在、世界で一番のチェスプレーヤーはAIでもなければ人間でもありません。それは人間にAIをプラスしたケンタウルスです。

このケンタウルスが、今後のモデルとなるでしょう。ベストな医者は、人間の医師プラスAIです。つまり、ロボットと隣り合わせで人間が作業をするということです。ロボットと人間の知性は補完関係にあり、ロボットと協力することはどちらか一方で行うことよりも、さらに良い結果を生むのです。

これが「COGNIFYING」された世界です。

電通報でも記事を掲載中


「電通」に関連する記事はこちら

1 2 3 4 5
電通デザイントーク
電通デザイントーク
電通デザイントーク
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ