「WIRED」創刊編集長ケヴィン・ケリー「バーチャル・リアリティで、未来の人間は何を得るのか?」

VRによって人間は何を得るのか?

私たちがVRによって未来で手に入れるものは、新たなインターネットと呼べるものでしょう。これまでのインターネットは“知識のインターネット”でした。ニュースを見たり、Wikipediaで調べたり、インターネット上にはドキュメントや画像、動画などの情報が存在しています。

一方で、VRによる経験はこれよりも深いものです。必ずしも考える対象ではなく、感じることができる“経験のインターネット”と呼べるものでしょう。

未来では“経験”が新たな通貨となり得るのです。私たちは誰かの経験を買ったり、あるいは経験をダウンロードして共有できたりするようになるのです。そこでやりとりされるのはスリル満点の経験だけではなく、例えば病気で寝ているときにバーチャルで誰かに付き添ってもらうといったことも予測されます。いわば、“経験の経済圏”がインターネット上に出来上がるということです。

VRから得られる情報は、50%以上が視覚以外の感覚からもたらされます。例えば、手にグラブを着けることで、触覚からも情報を得ることができるようになります。優れたVRデバイスは、ゴーグルだけではなく、グラブなどを装着したものにもなるでしょう。現在は、この領域がまだ欠落しており、完全な経験を提供するために、今後は重要になっていくはずです。

さらにいえば、バーチャルな世界で最も重要で不可欠な体験は、モノを見ることではく“人と遭遇すること”です。私も実際にVRで人と会ったのですが、これは本当にワクワクする体験でした。

VRであっても、目の前にいる人は本当にリアルで実在感があり、髪の毛やまつげが動いているのが見え、衣服の繊維の一つ一つまでを詳細に眺めることができるほどの精巧さです。これはSkypeやFaceTimeを使って誰かと顔を合わせる体験とは全く異なります。なぜ違うのかを説明すると、まさにその人がそこに存在するかのように感じられるからです。

仕事やプライベートでコミュニケーションするときも、こうした新しいテクノロジーを使えば素晴らしい経験になるはずです。そして、VRはソーシャルメディアの中でも最もソーシャルな社交の場となるでしょう。

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