株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。第8号が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。
※本記事は、『100万社のマーケティング』第8号(2016年8月29日発売)の誌面を一部抜粋したものです。
01 あなたの個人情報、セキュリティは大丈夫?
Cifas「Data to Go」(英国)
個人情報が貴重なデータであり、それを狙う犯罪があったり、自らの身を危険に晒すことがあることは多くの人が知っている。しかし、SNSが人々の間で浸透している今、何気ない投稿や、プロフィールの公開設定などにより、個人情報がいとも簡単に流出してしまうことに気づいている人は少ない。その危険性を啓蒙する目的で、英国のNGO団体・Cifasがカフェで実験を行った。
ドリンクを渡す際に名前を呼ばれる外国のカフェのシステムと、Facebookを利用して行った同実験。カフェ店頭に「Facebookのいいね!で、コーヒーを無料サービスします」という看板を掲出。来店客はカウンターで自分の名前告げて注文し、いいね!した旨を店員に伝える。すると即座に、バックオフィスのスタッフ がFacebookとGoogleで名前を検索し、関連する個人情報を抽出。店員がその情報をカップに手書きして来店客に手渡した。自分の個人情報がたっぷり書かれたカップを手にした客は、一様に 驚き、困惑。こうしてCifasはSNSのプライバシー設定を強化するよう人々に訴えることに成功した。
02 スーツケースが、世界120カ国へ広がる広告媒体に!?
サムソナイト「I Wish I Had A Samsonite」(フランス)
古くなったスーツケースが輸送中に開いてしまうのを防ぐため、欧米ではスーツケースを黄色や緑色のテープでラッピングするのが一般的だ。近年は、成田空港や羽田空港など日本国内でも見かけるようになった。世界で最も丈夫で軽く、安全性の高いスーツケースブランドの一つとして知られるサムソナイトは、このラッピングサービスを宣伝手段として活用した。
サムソナイトがフランスの空港で提供したのは、無料のラッピングサービス。テープの上からは、「I WISH I HAD A Samsonite.(サムソナイトを持っていたらなあ)」と書かれたシ ールを貼付した。ラッピングサービスを受けたスーツケースは約1200個。「サムソナイトなら、こんなラッピングは必要ない。スーツケースをサムソナイトに替えましょう」–そんなメッセージが、旅行客とともに、フランスから世界120カ国へと広がっていった。 乗客は無料でラッピングサービスを受けることができ、サムソナイトはスーツケースを広告媒体として活用し、オ ーソドックスかつ効果的な広告を実現することができた。