日本人は自信を取り戻せ
――日本市場や日本人についてはどう見ていますか。
世界経済における重要な課題の一つは、「自信」を取り戻すことだと考えています。日本も同様ではないでしょうか。中間層にあたる消費者が自信を持っている市場は成長します。ソーシャルメディアなど様々なメディアを通じて、ポジティブなパワーは必ず広がります。
日本の消費者には、未来は現在より必ず良くなるはずだと信じてほしい。また、世界の中での日本の立ち位置についてもっと自信を持っていいと思っています。これまでも日本の持つ技術や考え方が世界に影響を及ぼしてきました。デザインに関する哲学や仕事への倫理観、家族への考え方……、挙げればきりがありませんが、こうしたことの一つひとつが世界をより良くしていくのだと思います。
――オグルヴィに37年間在籍していると聞きました。会社はどう変わりましたか。
実は37年前とそう変わっていないと思っています。昔も今も、(創設者の)デイヴィッド・オグルヴィの会社です。このたびの来日は10年ぶりですが、東京のオフィスで社員と話して、「やはりオグルヴィだ」と感じました。
デイヴィッドは優れたクリエイターで、ブランドの価値を高めることでビジネスを成功させることができるという理念を持っていました。我々は、グローバルクライアントへのサービス提供を通して、世界各国のオフィスでこの理念を実践してきました。これはブラジルであっても、トルコであっても同じです。
デイヴィッドが残した理念は今も変わりませんし、CEOである私にとっては、この理念を引き継ぎ、実践いくことが重要な役割です。
クリエイティブで世界を変える
――あらゆる広告会社にとってデジタルへの対応が急務とされています。
ビジネスの根幹は消費者とブランドとの関係にありますが、その関係性のあり方は常に変わります。その要因の重要な一つにデジタルがあることも間違いありません。
我々は20年以上前に専門チームを立ち上げ、アジアにおけるパイオニアとしてデジタル部門を強化してきました。また、デジタルのスキルを身に着けるための研修や、スキルを持つ人材の採用を続けています。特にデータ分析については、特別なスキルを持った人材が必要だと考え、専門チームを抱えています。
――広告会社はこのデジタル領域において、コンサルティング会社などとの競合が避けられなくなりましたが、どうお考えですか。
かつてコンサルティング会社はアドバイスのみで「実施」にはタッチしませんでしたが、今はデジタルエージェンシーを買収して領域を広げています。私たちもコンサルティング領域に投資しています。そのため、ことデジタル領域では競合することが多くなりました。
そんな中で我々広告会社はクリエイティブという大きな強みを持っています。優れたクリエイティブは世界を変えられると信じています。クリエイターにはなるべく大きな課題を与え、優秀なクリエイターの育成に力を入れています。その能力を最大限に発揮できる環境づくりは我々のノウハウとも言えるものです。