リア充アピールも終焉?自然体を好む傾向に
石井リナ:なんだか、悲しくなってきます(笑)。ただ、そうしたリア充アピールのような投稿も最近では落ち着いてきている気がします。原田さんはどう思われていますか?
原田さん:そうですね、頑張りすぎているのがちょっと痛いな、という風潮も出てきて、一時より少し収まってきたかなと思います。ブレた写真をわざと載せたり、自然体の写真の方がいいって話してたりもしますよね。
石井リナ:私も同じこと言われました。「ブレてる方が盛れる」とも若い女の子には言われましたね。今、使い捨てカメラの「写ルンです」で撮った写真をわざわざデータにしてInstagramに載せるっているのも流行っています。手間暇かけて、自然体な写真をInstagramにも載せているので、Instagramのフィードにかける思いは変わってない気がしますが、載せるものの良し悪しが変わってきているんです。アナログ回帰ではないですが、今までのインスタジェニックな流れも徐々に落ち着いてきたかなと。
原田さん:アナログ回帰は日本だけでなく、世界的な傾向でもあるなと思います。NYやロンドンに行ってもレコードが好き、使い捨てカメラを持っているなどの若者も多いので、同じ流れが日本にも来ているのかと思いますね。
欲求は昔も今も変わらない部分がほとんど
石井リナ:「若者の実態を掴むにはどうすればよいか?」などと聞かれることが私自身多いのですが、原田さんはどう考えられていますか?
原田さん:世代論をやってきて思うことは、人間ってやはり変わらないことも多いんですよね。お腹が減ったら機嫌が悪くなる、彼氏にフラれたら涙が出るとかって、昔の若者でも同じことだと思うんです。その変わらない部分がほとんどだということを忘れてはいけないと思います。もちろん変わっていることもありますが、それは少ないウェイトなんですよね。
石井リナ:おっしゃる通りですよね。基本的に若い子の欲求も変わらず、アウトプットの方法が変わっているという考え方がベターですよね。もちろんSNSで今まで見えなかった他人の様子が可視化されてしまっているので、その欲求に加速がかかっている部分もあると思いますが。
原田さん:人間なので色々な側面があるじゃないですか、その突飛な一面で大人たちが右往左往してはいけないですよね。基本的には変わらない部分がほとんどであるということをきちんと認識して、その上で今の若者がどう動いているのかっていうのを把握すべきですね。
石井リナ:今日はお忙しい中ありがとうございました!
「若者の欲求や行動は昔とほとんど変わらない、それを認識すべきだ」とお話されていたのが印象的で、とても共感する言葉でした。SNSを通じて若い子の行動を見ていると、自分が学生の頃を思い返して、「なんとなく分かる」と思うことも多いです。もちろんアウトプットとしての行動は違いますが、欲求自体は同じだったりします。
いま、消費欲求がないと思われている若者の間でも、一部バブル的な消費があり、そのブームやトレンドの発生の仕方について分かりやすく書いてあるのが、原田さんが執筆された「パリピ経済」です。非常に勉強になるのでみなさまも是非ご覧くださいー!
原田曜平
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。博報堂入社後、ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、現在、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを務める。多摩大学非常勤講師。著書に『近頃の若者はなぜダメなのか』『さとり世代』『ヤンキー経済』などがある。