広告は「面白い」がいいのか「売れる」がいいのか、ラジオCMから考える

「面白い」か「売れる」か

林さんからは、基本評価していただいたのですが(何度でも言いますね)、ただ商品のターゲットであるダイエットをする人の実感からは遠いことは分かっておくこと、と言われました。

確かにカロリーゼロという情報は、体型を気にする人とかダイエットをする人が欲しい情報です。でも僕が書いた台本はお爺さんと孫の会話ですし、ダイエットにまつわる話はでてきません。つまり、カロリーゼロという商品の情報は織り込まれていても、ターゲットが商品に手を伸ばすCMにはなってないということだと思います。端的にPR価値が低いということです。

この好評を聞いた時、悩んでいたもう1つのアイデアを思い出しました。それは甘いモノを控えるか太るかの2択なら迷わず後者を選んできた、と主張する女性のモノローグで進む台本でした。そっちの方が、カロリーゼロという商品情報とCM内容のかみ合わせが良さそうです。甘いモノを食べなおかつダイエットをしたい女性、というターゲット層にはアピールできるのかなと思います。

ただそれを書いた時、商品と密着し過ぎていて内容はそんなに面白くないなと思いました。言い換えると、CM自体は面白くないなという判断です。

でも、広告としてはそのCMがどれくらい人を動かすか、が一番重要なはずです。そのCMをつくったことにより商品を売れるようにすることがまず求められることでしょう。会社の認知度や好感度を上げたい、イメージを変えたいという目的のCMもあると思いますが、それもその先に「より売ること」があると思います。

という訳で、提出しなかったもう1つの方が広告としては良かったのかな、と今では思っています。思っていますが、あんま面白くないけど、商品売れそうだからこっちのCMでいこう!という判断は何か悲しいし嫌です。

読者の皆さんは面白いけど、商品売れなそうなCMか、面白くないけど商品売れそうなCMという選択肢ならどちらを選びますか?

人生観が出る問題かもしれません。僕の見立てでは、前者を選ぶ方は貧乏になりがちで、後者を選ぶ方は嫌な顔になりがちだと思います。

僕は貧困も顔の歪曲も嫌なので、次から面白くかつ売れるCMを目指したいです。途方もなく難しい道ですが、それは芸人が面白くかつ売れるネタをつくりたいと願う気持ちと似ているな~と思います。ちょっとカッコよく言い過ぎている気もしますけど。

次回のコラムでは特別企画をお届けします!

今野和人(お笑い芸人/第53回宣伝会議賞グランプリ)

1984年12月7日生まれ。国際基督教大学教養学部人文科学科卒業。プロダクション人力舎の養成所「スクールJCA」で雨宮龍也・井村俊哉とともに、お笑いトリオ「ザ・フライ」を結成。キングオブコント2011準決勝進出。第53回宣伝会議賞グランプリ受賞。現在、日本テレビ毎週月~金曜日『ZIP!』で放送中の『朝だよ!貝社員』の脚本に参加。https://twitter.com/thefly_konno

 


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