「CMのプロ」が広告業界41年目にして今思うこと(ゲスト:黒須美彦さん)【前編】

「CD」という職種の人はどのように仕事をしているのか?

黒須:うん、そうしないと。管理職で朝会議があるから、朝9時半に行くんですよ。それが11時頃に終わって、みんなが来るのは夕方5時ぐらい。スーパーフレックスだったから。その間、ずっと会社にいながら、みんなが来るのを待って、そこから企画会議でしょ。はじまるのが夜8時頃なので帰らないと死んじゃいますからね。それで次の朝に新たな企画や残したモノを整理してまとめると。だから、わりと最後は1人で作業してるんですよ。

権八:企画書も全部お1人でプレゼン前日にえいやー、でまとめられるから。

中村: CMプランナーからCDになったとおっしゃいましたけど、聞いてるリスナーはそのへんがどのように仕事をしているのかわからないかもしれませんね。今の話でいうと黒須さんがボスというか、CDになって、そこにたくさんのCMプランナーが企画を出してきて、それをうまく束ねて、いい企画を残していって、前段というか、おおまかな流れのところは黒須さんが全部ご自分で書かれるみたいな感じですかね?

黒須:基本的にはCMプランナーという職種でずっと来ていて、CMを考えることでその仕事を成り立たせようとするので。CDはどういう仕事なのか、いまだによくわかってないけど、やや監督的な立場ですかね。「ディレクションしてくださいよ」と言われることがあるけど、それがわかったら自分でそこに行くよと。

みんなの企画の端々をヒントにして束ねたりしながら、模索することで土台を固めるって感じですかね、CDって。でも、企画をしないと意味がないと思っているから、いわゆるプレイングマネージャー的な立場になりたいなと。ただ、権八と一緒にやると、濃い企画が溢れるようにいっぱい出てくるから、僕はあまりやる必要ないと思って、しませんけどね。

権八:すみません、恐縮です(笑)。確かにCDはどういう仕事なのかって難しいですよね。

澤本:でも、昔はCDって言葉が世の中にそんなになかったけど、今は結構いっぱいの人がCDって自称されてるから。僕らは広告でクリエイティブの方向性を決める人をCDと思ってしゃべってるけど、普通にいろいろなことをして物事を決めていくつくり手も自分でCDって言ってるから。意外と僕らがCDって言ってる範疇のほうが狭いのかもよ。

黒須:今は一般の人が「クリエイター」って名刺に書いちゃう。

澤本:だから、「広告のCD」って言うとみんなわかるかもしれないけど、どんなことでもつくってるとCDだから。

権八:お店とかやってる人でも名刺に書いてたりするよね最近。

澤本:そう、だから黒須さんは「広告のCD」というのでずっとプランナーをやってらっしゃって、CDもプランナーの延長線上でやってらっしゃるという方だから。いろいろなCDがあるけど、そういう人だと言わないと、意外といい加減な感じで聞こえちゃったら困るよね。

黒須:いい加減な人ですけどね(笑)。でも、確かにCD講座が宣伝会議でもすごい人気ですよね。CMプランナー講座よりもCD講座に今は人が集まってるらしいし。

権八:僕が最近聞いて、そうなんだと思ったのは、僕らが昔、「マーケ」と言っていた人達が「クリエイターです」あるいは「CDです」と言って、広告や映像コンテンツをつくるじゃないですか。そういうもんなんですか?

澤本:CDに求めているものがブツをつくるだけじゃなくなっている。モノについての情報が広がっていって、そのモノ自体が売れたり、認知度が上がったりすれば、コンテンツをつくらなくてもいいやという発想はあるわけじゃない。つくるとしても、コンテンツにお金をかけてやらなくてもいいやという考え方もあって。だから、僕らが思ってるCDという言葉と、一般の人が思ってるものとだいぶ違うんじゃないかな。

権八:なるほど。ただこういう事言うとアレかもしれないけど、そういう人達が手がけられた映像て、なんかこう、ね…わかるでしょ?モノづくり、映像表現へのスタンスというか愛というか…。あ、もちろん全部じゃないよ。なんつうか、たとえそれがそのプロジェクトの色んな施策のワンオブゼムの手段だとしても…。

中村:テレビCMが?

次ページ 「「テレビCMのプロ」が少なくなっている時代」へ続く

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