「CMのプロ」が広告業界41年目にして今思うこと(ゲスト:黒須美彦さん)【前編】

「テレビCMのプロ」が少なくなっている時代

権八:まあ、テレビCMに限らずだけど。手段として捉えてて執着がないのかわかんないけど映像や言葉やデザインの力をそれほどは信じてなさそうに見えて、寂しくなるとゆうか…。

澤本:わかる、わかる。本当はそれでいいものがつくれていれば一番いいわけだよね。

権八:そうそう。

澤本:いいものというのは15秒、30秒という単位の映像として、これすごいじゃんというものをつくれていればいいんだけど、そこまでしなくても15秒の映像はつくれちゃうから、それで役に立っちゃっているということもあるわけで。

権八:まぁ、あるのかもしれないね。

澤本:だから、僕がずっと言ってるのは、とにかくプロになったほうがいいと。CMプランナーだとすると、映像のプロ、動画のプロになる。プロが少なくなってるから、プロになっていくということでこの先、僕たちはメシを食っていく。ものすごく有能なアマチュアの人達がいっぱいみたいになってる中で、そこが重要で。

今は機材がいっぱいあるから、学生さんや素人というと語弊があるけど、一般の人がつくったものとそんなに変わりがなくなってくると思うんですよ。そうなると、むしろちゃんとつくれる人が大事にされるんじゃないかと思う。これは仮説だし、自分に利益誘導的にしゃべってる部分もあるけどね(笑)。監督についてはそう思うんだよね。

権八:映像ディレクター。

澤本:そうそう。高田さんなんてCMにものすごく向いてるじゃない。

権八:高田名人。雅博さんね。

澤本:やっぱり高田さんがつくった15、30、60秒の映像は素晴らしいわけですよ。同じ15、30、60をつくる監督で、細かいことまで考えてなくて、ざっくりつくる人もいるじゃない。こんなに違うんだと思うよね。でも、効果としてはそんなに変わらないのかもしれないなと。

ただ、つくってるものに関しては、僕らはどうやったっていいものをつくりたいと思っちゃうから、いいものをつくるためなら徹夜してもいいみたいな感じで生きてきてるけど、そこまでのことをしなくてもいいじゃんという人もいるじゃない。自分がつくったということのほうが大事という人もいるからさ。そのあたりは難しいよね。否定するものでもないだろうけど、自分がやりたいこととは違うっていうだけの話で。

権八:なるほど。山内さんも素晴らしいですよね。

澤本:すごいよ。全然違うもん。

権八:番組にも来てくれた山内健司さんね。

黒須:昔、山内さんがすごいと思ったのは、何かの企画をやって、プレゼンをして、その企画がダメだったんですけど、彼はもういいんだと言うんです。頭の中で全部15秒の演出、時間割ができていて、セリフもできていて、キャストも決まっていて、その中で誰がどうしゃべって、どのアングルを抜いて、15秒はこうできる、というのが頭の中でできたからもういいんだと。つくらなくていいんだと。

中村:すごいですね。その解像度たるや。

権八:15秒映像の完璧な職人のまさに極北というかね。今の話で真骨頂が出たよね。そういうことで満足感があったりするというか。ちょっと特殊すぎるけど(笑)。

中村:そろそろ時間ですが、次回も引き続き、黒須さんをゲストにお迎えしてお送りしたいと思います。

<後編に続く>

構成・文 廣田喜昭

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