広告会社に残るか、独立するかはどう考えた?
中村:そんな黒須さんが2003年にシンガタに入りましたと。シンガタが新しく設立したときに権八さんと同じタイミングですか?
権八:そうです。
中村:初期メンバーとして、佐々木宏さんと参加したと。黒須さん、このときに博報堂を辞めてシンガタに行こうと思ったきっかけってどんなことなんですか?
黒須:20年ぐらい前に海外クリエイティブエージェンシーがヘッドハンティングに来るらしいよみたいな噂があって。タグボートの岡くんと海外からヘッドハンティングが来たら、その時は2人セットで売ろうぜなんてもくろんでて。「2人で1億、いや2億と言ってみる?」なんて盛り上がっていたけど、2年ぐらい話が全然なくて(笑)。
権八:噂があると心配していたけど(笑)。
黒須:やっぱり英語ができない俺達には来ないなと。でも、そういう動きは、始まっていて、その数年後に、岡くんも僕も佐々木さんとかも、海外視察研修に行ってるんです。海外のクリエイティブエージェンシーを見に行くという企画があって、これはいいなと。クリエイティブだけを標榜して、それだけでメシを食っていくというのはかっこいいなと。そういうのが動かしたんでしょうね。
みんな必死に模索していて、タグボートが独立したりね。佐々木さんも同じように思っていたみたい。ある程度の期間、大きい会社にいると、ま、当然のように、管理職になっちゃうじゃないですか。チームを持って、査定したり。人を管理するのは面倒くさいというか大変で、それよりはつくっていたいと思ったんですね。権八はその頃、若かったですけどね。
権八:そうですね、まだ4年目でしたね。
黒須:そんなに若かったんだ。
権八:管理職にならずにCDとして今も現役でやられていて、当然そのほうがよかったと思ってるわけですよね。
黒須:そうですね。今は、また考え方も変わってて、澤本くんみたいに偉くなっても現場もできるし、代理店自身がそういう考え方に立っている。昔はそんなことなくて、部長職になったら「何もつくるな」「考えるな」みたいな感じで。
権八:澤本さんは電通に残ったじゃないですか。
澤本:いい表現ですね。残った。勇気がなかった(笑)。
権八:今、黒須さんが言ったみたいに窮屈な面があるのか、そうじゃなくて時代が変わって、大企業もプレイングマネージャーというか。澤本さんは絶対に現役でやりたいわけじゃないですか。
澤本:うん、両方だね。やれてるから残ってるというのはあるし、良い点と悪い点があって、良い点はうちの会社にいるから映画の話が来たり、違うジャンルの話がぼんぼん来る。こんな話が僕のところに来るんだというのがある。独立してたら「CMつくりませんか」「Web動画つくりませんか」しか来ないから、自分の中には変化がないと思うし。
あと、博報堂さんも電通もそうだけど、社内に全く違うジャンルのプロがいるじゃない。それこそ昔、洋基くんがいた頃は洋基くんと話すとこんなやつがいるんだと思ったし。今は岸と話すと、こういう考え方するんだというのがあって。いっぱいまわりに刺激がある。
僕は辞めちゃうとサボると思うんだよね。自分の中で動画をつくっていればいいやと思って。それはすごく幸せではあるけど、その反面、ある程度管理したり、いろいろやらなければいけないし、ずっとつくっているわけにもいかないから半々かね。