参入相次ぐ、激動のマーケティング業界!主要プレイヤーが考える「10年後のマーケティング」②

マーケティング活動のデジタルシフトの必要性が叫ばれる中、そのサポートを担うマーケティング業界は、異業界からの参入も相次ぎ、まさにいま激動の市場。そんなホットな市場の主要プレイヤーの人たちは目まぐるしく変わるマーケティング環境をどのように捉えているのでしょうか。日本における、デジタルマーケティングを牽引する実務家の皆さんに、現在、そして10年後と期日を指定した未来の「マーケティング」がカバーする領域と役割について、考えを聞きました。


【登場企業】アイ・エム・ジェイ/オプト/サイバーエージェント/セールスフォース・ドットコム/ソフトバンク/電通デジタル/博報堂DYデジタル/マルケト(社名50音順)

(*本記事は、月刊『宣伝会議』2016年10月号 900号記念特集「マーケティングはメタ(俯瞰)で動かす。」の一部を抜粋したものです。10月号の詳細はこちらからご覧ください)

マーケティングの成功に重要なのは
共通のゴールを明確に描くこと

ソフトバンク
法人事業開発本部 デジタルマーケティング事業統括部 統括部長
藤平大輔氏

当社がマーケティング活動において重視している点は、結果や過程を含め、マーケティング自体を数字で把握することです。当社としてのKGIは契約数を伸ばすことであり、そのための販促活動を行っていますが、現在の複雑な情報環境の中、一つの広告だけで契約に至るとは考えにくい。実際のカスタマージャーニーを分析すると、CMやWeb広告の接触数、来店回数など多くのKPIが存在します。その複雑な相関性を紐解くことで、さまざまな知見が得られ、効率的な活動や未来予測が可能になります。これはお客さまにとっても好ましい情報量の接触になり、マーケティングにより「双方有益な関係」を築けると考えます。

マーケティングは今後、よりデジタルシフトが進み、データを蓄積、分析し、活用できるプロフェッショナルな頭脳集団としての機能を有するようになり、企業経営におけるブレインとしての役割を担っていくものと考えます。そうした集団を1から育てるのは大変なため、短期間でブレインとしての機能を果たせるような体制を構築すべきだと考えます。

一方で懸念されるのは、マーケティング活動に必要なデータの面倒を誰が見るかという問題です。データの蓄積・分析には、システムの構築や連携が必須で、システム部門との連携は避けられません。しかし、両部門は違うミッションを持っており、100%どちらかの思惑で動くことはできません。そのため、両部門を俯瞰するような機能や役割をもった組織・人材が必要になるのではないでしょうか。企業のマーケティング活動をサポートする立場でいえば、やはり共通の目的意識として、マーケティングのゴールを明確に描くことがより重要になります。企業側もPOSやユーザーデータの共有など、これまでとは違う意思決定、パートナー選択が必要になるでしょう。

マーケティング活動の主体は、データの蓄積・分析のフェーズから、データの予測へと進化していくのではないでしょうか。ユーザーの行動や心情を先回りして予測し、タイムリーで無駄のないレコメンドをすることで、確実な成果をもたらすことを期待されるはずです。

当社では、企業のデジタルマーケティングを推進し、常に最新のアドテクノロジーやAIの活用、IoTを駆使して、お客さまのマーケティング活動をデジタル化します。また、ICTの提供のみならず、お客さまの真のビジネスパートナーとなることを目指しています。

10年後のマーケティングの役割は
社会接点に関わる全活動にまで広がる

電通デジタル
代表取締役社長COO
丸岡吉人氏

マーケティングとは、「売れ続ける仕組みづくり」です。大量生産、大量輸送、大量販売、大量告知(マスコミュニケーション)の基盤が半世紀ほど前に整い、その環境下で「売れ続ける仕組みづくり」の機能や役割がマーケティングに期待されました。これまでのマーケティングに関するあらゆる実践と探求は、ここにつながっています。しかし現在は、生産、輸送、販売、コミュニケーションを含む社会のあらゆる領域にデジタルが浸透しつつあります。10年後にはデジタルを基盤とした社会がはっきりと姿を現し、マーケティングへの期待は今とは相当違ったものになるはずです。「売れ続ける仕組みづくり」という定義は、歴史的な役割を終えようとしているのかもしれません。

「ファンを増やす仕組みづくり」「社会から選ばれ続ける仕組みづくり」。これが10年後のマーケティングの定義のひとつの可能性だと思います。企業活動全体と社会との接点に関わるすべての活動です。当社はデジタル化が進展した社会での企業の存在価値は、どれだけよい仲間と協働して価値を生み出せるかであると考えています。世界中の優秀な人材が「ぜひ働きたい」と思う企業、優れた技術を持つ企業や団体が「協働したい」と希望する企業、少々高くても製品を「買い続けたい」という顧客を多く持つ企業、顧客とともに「価値を共創していく」企業、社会のために「存続してほしいと期待され投資を集める」企業。これらは、これからの社会ですべての企業(団体や組織も)が目指す姿です。

そしてそうなるためには、顧客との関係づくり、価値づくりを担ってきたマーケティングの知識や経験、人材が必須です。これが、10年後のマーケティングが「ファンを増やす仕組みづくり」「社会から選ばれ続ける仕組みづくり」の機能や役割を担うと考える理由です。マーケティングの領域は今よりもさらに広く大きく深くなっています。当社は、マーケティング分野のデジタルトランスフォーメーションを支援します。

それは、今のマーケティング活動をデジタルで置き換えるだけではありません。企業の目指す姿を実現するためのデジタル化への貢献です。当社はマーケティング知識や経験、技術や人材を拡充し、これまでのマーケティング概念の範囲を超えたサービスを提供していきます。それはすなわち、顧客の期待に応え続けることを通じて、ファンを増やし社会から選ばれ続ける企業となることでもあります。

デジタルや情報流通の変化に合わせ
マーケティングも進化が必要

博報堂DYデジタル
代表取締役社長
辻 輝氏

マーケティングの主な目的は、あえて簡単に言うならば「ブランドの向上」「顧客の創造」「顧客の育成」の3点に大別できると考えます。つまりマーケティングは生活者とエンゲージメントを築くことでブランド価値の向上を図り、ブランドのファンとなる顧客を見つけ、その顧客とより深く長くつながり続ける活動です。

近年、生活者の環境やメディアへの接触状況、技術革新に伴う情報流通も変わりましたが、そのような変化に合わせ、マーケティングも進化させていかなくてはなりません。

しかし現状は、生活者やメディアのデジタル化は進んでいる一方、マーケティングはデジタルによる大きな進化を遂げていません。マーケティングを進化させるためには、生活者のインサイトに基づいた各種データを活用したマーケティングを推進する必要があります。いわゆる“データドリブンマーケティング”がマーケティングを進化させるエンジンになります。

博報堂DYグループは、生活者とメディアを結ぶ“生活者DMP”をベースとして、高度なデータドリブンマーケティングを推進し、得意先の課題解決や事業の成果に貢献したいと考えています。そのために、当社1社だけではなく、博報堂DYグループ各社のあらゆる組織と連携し、デジタルメディア中心のデジタルマーケティングから、総合広告会社として、オンライン・オフラインメディアにクリエイティブをかけ算し、プロモーションも含めたマーケティング活動全体のデジタル化を推進していきます。

マーケティング全体における目的や課題、KPIを達成するために、社員一人ひとりが通常の業務の視点に加え、鷹の目の視点で業務に向き合っていく必要があります。高い視座を持って立体的に考える、この視点は、今回のテーマ “複眼思考を持ったマーケティング”と同義になると思います。

今後10年の日本の経済成長を考えると、デジタルを活用し、経営、マーケティング、販売、人材などの戦略の一体化が重要になります。そのために、組織においても抜本的な改革に挑戦し、デジタルと異なる能力を掛け合わせた新しい人材の創出が必要です。デジタルは、今後もデバイスの変化やIoTなどの新しい技術により、生活者のライフスタイルやメディア接触状況を大きく変えていくと思います。生活者発想を核とした生活者DMPにより、マーケティング全体を進化させ、得意先のマーケティングのみならず、事業成長に大きく貢献していきたいと考えています。

顧客のライフサイクルに合わせた
組織変革が求められる

マルケト
代表取締役社長
福田康隆氏

これからのマーケティングは、コストセンターからプロフィットセンターへシフトしていくでしょう。デジタルマーケティングやソーシャルメディア、モバイルテクノロジーが進化したことによって、企業活動におけるマーケターとマーケティングの位置づけが大きく変化しています。経営視点を持ち、テクノロジーを扱い、データにもとづいて事実を見極め、顧客との対話を重視し、関係性の構築と継続を目指していく。

こうして企業の売上に深く関わる存在となることが、これからのマーケター “Tomorrow’s Marketer” には求められています。マーケターの皆さんには、自身が経営の中心になるという自信を持ってさらに進んでもらいたいです。また、顧客に寄り添うためには、CEO、CMO、CIOが連携して、顧客を重視したマーケティングを実現するための組織変革が必要です。

多くの企業がテレビ、ソーシャルメディア、モバイルといったチャネル単位に別の部署を持っていますが、これからのマーケティングのためには、顧客のライフサイクルに合わせた組織になっていくべきです。そのために必要な人材はマーケティングのスペシャリストだけではありません。戦略を考える人、顧客視点を持ったストーリーテリングの能力を持った人、説得力のあるコンテンツをつくり、実行する人、そして、これらの中心にいて、それぞれの能力をつなげるコーディネーターのような人材が必要です。このような人材を揃えたチームが構築できれば、顧客視点を中心とした組織となり、企業のマーケティングが変わり、ビジネスを変革できるでしょう。

上記で述べた顧客中心のマーケティングの重要性はこれまでも唱えられてきました。それを実現できるテクノロジーが追いついておらず、多大なコストが掛かるため一部の大企業でしか実現できませんでしたが、今ではマーケティングオートメーションを通して多くの企業に試してもらうことができるようになりました。

当社は、テクノロジーの進化を取り入れ、マーケターの期待に添えるよう、IoT、AI、マーケティングオートメーションを融合させ、分析機能や予測機能を強化した新たなプラットフォームを開発中です。マーケターの悩みを解決するソリューションを日本に紹介することが当社の使命です。当社は、マーケターの皆さんとともに、人々の暮らしに新たな価値を見出すような、新しいビジネスモデルの創出に貢献できるよう努めていきます。

*本記事は、月刊『宣伝会議』2016年10月号 900号記念特集「マーケティングはメタ(俯瞰)で動かす。」の一部を抜粋したものです。10月号の詳細はこちらからご覧ください

宣伝会議 編集部 (900号企画)
宣伝会議 編集部 (900号企画)
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