「文化祭の前日感」をとても大事にしている
澤本:狙いというか、広告会社の人が書くという、今までの決まりきったものとは違って、異業種の人がラジオにもCMにも入ってくると、全く違ったものができてくるんじゃないかと思って。それで最初に実験というと変だけど、グランジの方々にやってもらったら、うまかったじゃない。ということは、もっと書きたい人がいるんじゃないかと思ったから、まずは吉本さんと組んで、興味ある人ってやってみたら、全員書けるんだよね。・・・でも、大谷さんは最後の商品のナレーション、ほぼ適当でしたね(笑)。
大谷:そうです(笑)。その場で全部。
澤本:前段のネタは完璧なんだけど、クライアントとの接点が全くない状態で(笑)。
権八:今のCMの最後のナレーションはどんなでしたっけ?
大谷:後半のアドリブみたいなところは全部その場でつくっちゃったので。だから、台本にはしてないんですよ。
権八:えっ!? 「けだし」は流石にあったんですか?
大谷:「けだし」までやって、後は頭文字Kのやつで何回か練習してもらって、「それいいね」と言って、そのノリで超面白いからゲラゲラ笑いながらやっちゃおうって。
中村:アドリブで撮ってるんですね。
権八:「けだし」ってね(笑)。「けだし」じゃねーよと思いながら。
大谷:シューレスジョーのツッコミが入ると超面白くしてくれるんだなぁと。その喜びですよね。自分が思いついたときは「さほど」と思ってるけど、演者がこんなに面白くしてくれるんだって、うれしかったですね。
澤本:遠山くんにも言ってるけど、ラジオをぜひやってください。書いていただいて。
大谷:なるほど。それはまた違う面白さがあるのかなと思いました。
澤本:今、CMが流れたじゃない。これはトヨタに何も言わないで流してるんだけど、CMを流したから後でお金くれって言おうかと思って。
大谷:えー!?
澤本:ラジオCMの押し売り。流したでしょと。
大谷:澤本さん、そういう話は放送に乗せるのやめましょうよ(笑)。料亭か何かでするもんでしょ、こういうのは。
一同:笑
澤本:ラジオはあまり興味を持ってくれてないかもしれないけど、流しちゃって、最終的にこれぐらいの人が聞いてたから、それに似合うぶん、5千円でもくださいって。
権八:5千円(笑)。
大谷:不思議なんですけど、CMつくると、めっちゃ商品のこと好きになるんですよね。
権八:あぁ、いいこと言うなぁ。
澤本:そうなっちゃいますね。
大谷:つくり手はこういう気持ちでつくったんだなとか。途中からそっちに変わりましたね。やっていきながら、どうやったらみんなにトヨタさんの熱い思いというか、「こんな気持ちでつくってんだぜ」というのを短い時間で伝えられるかと。そんなの全く考えてなかったから、ちょっとビックリしましたね。
澤本:クリエイター気質ですね。
大谷:そうなんですか? クリエイターってそういうことですか?
澤本:盲目的に好きにならざるをえないじゃないですか。好きになりそうでもないもの、たとえば僕はタバコを吸わないから、タバコのCMは全然やりたくないし。
権八:トヨタの方とは議論というか。
大谷:全くしてないです。みなさんがやってくれたのかなと。僕はやり逃げで、また叱られる要素ですね(笑)。担当が水道橋博士だったら怒ってますね。
澤本:トヨタは本社が水道橋ですよ。
一同:笑
大谷:やばいな、こうやって繋がっていくんだな。ロックフェスもそうなんですけど、バックヤードの「これ面白いじゃん!」みたいなノリって、そのままステージに出ちゃうんですよ。だから、裏側のバックヤードを超大事にしてます。しっかり食事を用意したり、主催がアーティストを呼びに行くみたいなフェスばかりがどんどん動員が増えてますね。
澤本:なるほど。
大谷:その空気感が絶対に外側に伝わるんですよ。なんだろ、この感じ。僕は「文化祭の前日感」って呼んでるんですけど。ワクワク、キャッキャ言いながらつくるじゃないですか。あの感じが大事。青春っていう言葉に置き換えてもいいですけど、小さい頃に『うる星やつら2』という、文化祭の前日を何回も繰り返す映画を見たんですけど・・・。
中村:あ、『ビューティフル・ドリーマー』ですね。
大谷:それを見て、ずっと心に残っていて。あの感じが超大事だなって思ってますね。
中村:残念ながら時間がきてしまいましたが、来週も引き続き、ダイノジ大谷さんをゲストにお迎えしてお送りします。
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構成・文 廣田喜昭