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長時間労働は、会社の成長につながらなかった
—「ほとんどの社員が17時に帰る会社」をつくったきっかけを教えてください。
私は、 17時に帰るかどうかよりも、長時間労働をしない社会にしたいと思っています。前職の広告会社にいた時は、毎日終電で帰るという働き方をしていました。テレアポをして、新規でお客さまを獲得して、そこから適切な媒体を探して提案して、また新しいお客さまを探して…という、どんどん忙しくなるビジネスモデルだったんです。長時間コツコツとテレアポしている人が勝つ、逆に、長時間働かないとノルマを達成し続けられない状況でした。当時、私は取締役営業本部長で、社員を遅くまで働かせていた張本人でした。
当然、社員は機械ではないので、このような働き方をしていたら、2年ぐらいで限界が来て辞めてしまいますよね。3年以上続く人がいませんでした。しかも、女性社員が多かったので、結婚・出産を見越して20代後半になると辞めていってしまう人が多かったのです。管理職も全員抜けてしまったので、取締役である私が新人の教育もしていました。こうなってしまうと、組織が維持できなくなってしまいます。いくら短期的に売上が上がっていても、人の入れ替わりの激しい会社は継続的に成長することはできません。働く社員にとっても、会社にとっても、働く環境ってすごく大事だなとこの頃に痛感しました。
17時退社のきっかけは、サマータイム制度
—それから自分で会社を設立されたのですね。最初から17時に退社されていたのですか?
実は、ランクアップを設立した当時の勤務時間は9時から18時までで、プラスで1時間くらい残業するというスタイルでした。状況が変わったのが、2011年の東日本大震災のときです。原発停止の影響で、節電対策が進んだ時期があったのを覚えてますでしょうか。そのタイミングで、30分始業時間を早める、サマータイム制度を導入したのです。勤務時間は8時半から17時半とした上で、「17時に帰ってもいいよ」という特別措置を3カ月間おこないました。家族のいる社員が多かったので、早く帰らせてあげたかったんですよね。その大義名分もあったので、みんなも17時に帰りやすかったのだと思います。そして、3カ月が経って、元に戻そうという時に、社員が「17時がいいです」「私たち、17時までで大丈夫です、仕事できます」と言ってきまして(笑)、今に至ります。
—「17時に帰ってもいいよ制度」を本格的に導入されてみて、いかがでしたか?
制度を取り入れて、会社の売上が伸びました。ただ、それだけではなく、17時に仕事を終わらせると、1日がすごく充実するんです。家族との時間を過ごすも良し、セミナーで勉強をするも良し、社員同士で部活動をするも良しと、みんなが平日からプライベートを充実させているように思います。
もちろん、仕事なので締切があって18時まで仕事をする日もありますが、私が目指しているのは無駄な長時間労働の撲滅なので、それはそれで良いかなと。ちなみに、新入社員は残業OKにしています。先輩社員が15分ほどで作成するエクセルシートに、入社したころは1時間かかったりしますよね。先輩社員は、早く帰ってしまうので、聞きたいことはすぐ聞きに行ったり、優先順位をつけたりと工夫をしながら仕事をするようになったみたいです。ダラダラ仕事をするのではなく、限られた時間で成果を上げるための基礎を今つくっている感じですね。
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岩崎 裕美子(いわさき・ゆみこ)
1968年2月8日北海道生まれ。1988年に藤女子短期大学卒業後、JTBに入社。その後、15年間広告代理店に勤務し、新規開拓営業として多くの通信販売の化粧品会社を担当。1999年から取締役営業本部長として活躍。しかし、長時間労働のワークスタイルで止まらない社員の離職に悩む。その経験から長時間労働のない経営を目指し、株式会社ランクアップ設立。オリジナルブランド「マナラ化粧品」は、ヒット製品である「ホットクレンジングゲル」をはじめ、多くの女性から支持され、現在、90億円を売り上げる。2013年には通信販売業界では初の東京ワークライフバランス認定企業の育児・介護休業制度充実部門に選ばれる。