“実現力”を上げるための、チームの「グルーヴ感」。
—企画力に加えて、加藤さんの並外れた“実現力”についてもお聞かせください。
「気合を入れてやりたいという時は、緊張感を求めて新鮮な人と組んでみたり、安定感が必要な時は信頼できる、いつもの人と組んだり、ギャンブルが許される時には、新しい発想をする人と組んだり、いろんな座組みでやっています。そのほうが、つくっている身としてもワクワクしますしね。たとえばNTTドコモの爆速エビフライの場合、技術力の高い町工場に開発を頼むのと、クレイジーな発想を持っているアーティストにマシンからデザインしてもらうのでは、まったく違うものができます。あるいは、見ている人がインタラクションでも遊べるゲームにするとなったら、マシンに凝るよりもインタラクションに凝ったほうがいいので、まったくチーム編成が変わってきますよね」
「僕をアサインしてくれた、クリエーティブリーダーの目指したい意図をブレないように実現するのが僕の役目です。ですから、その意図のコアを掴み、制作現場へ細かくクリエーティブディレクションする際は、丁寧にやることを心がけています。現場が何を目指せばよいのか、至極わかりやすく伝えるんです。わかりやすいと、現場に“グルーヴ”が生まれます。みんなが同じ向きを向いていると、すごく良い雰囲気になる。どのプロデューサーの方もやっていることだとは思うのですが、それぞれのキャラクターでやり方が異なりますよね。僕の場合、CDの意図を掴んだ後はスピードの速さを重視しています。動画やキャンペーンで何を目指すかという、コアの部分さえ把握していれば、こうなっていたほうがいいということを僕が現場で即決できます。マシンのデザインひとつとっても、こっちのほうがいいと、決断のスピードを速くできますよね」
鬼ムービーの学び③
予算や納期などの諸条件に応じて、最適なチーム編成を行い、皆が迷いなく同じベクトルで邁進できるよう「グルーヴ感」と「スピード感」をマネジメントする。たとえ実現が難しそうな企画でも、さまざまなフィールドの人たちの力を借り、その力をフル活用して、完遂させてしまう。人の心を動かすことができる迫力あるアウトプットは、チームの総力が最大化されたときに結実されるのですね。これができるかどうかが、まさに“実現力”の要なのだと思いました。