オンライン動画に「これが正解」は、ない
—ずばり、オンライン動画ってどうしたら成功するとお考えですか?
何が成功なのかは、各社の課題によって異なるとは思いますし、一概に“正解”があるわけではないと思っています。今年、当社がローンチしたLOVEシリーズ3部作も、一回目の「LOVE THERMO #愛しているで暖めよう」の反応を見て、二回目の「LOVE DRESS #愛してるをカタチにしよう」はこうしよう、三回目の「LOVE DISH #愛してるをカタチにしよう」はこう変えようと、試行錯誤しながらも、柔軟に取り組んできました。でも、そのときの「つくりたいこと」、つまり、テーマとモーメントの掛け合わせや、発信するタイミングがどうだったかについては、一つ一つ知見を溜めていくしかないと思います。お客様の反応はいつでも素直なんです。だから、トライ&エラーを繰り返しながら、反応にあわせて動画を調整したり、コピーを調整したり…。これがオンライン動画の良さだと思いますね。
—トライ&エラーの中には、炎上リスクもあると思うのですが、そのあたりはどうしてますか?
肌感として、テレビよりもオンラインのほうが、お客様との距離が近い感じがあるように思います。だからこそ、テレビで流す動画以上に、オンライン動画には気を使わなければなりません。もしかしたら炎上するかもしれないと想定し、リスク対策や次の手を準備することで、炎上を回避できるケースもあるかもしれませんが、まさか炎上するとは思わなかったというケースが、最も致命的なダメージにつながるんじゃないかと思うのです。その難しさや怖さをどう社内に共有していくかは、私たちも勉強会などを重ねて知見を深めていきたいですね。
—今後、オンライン動画の市場はどうなるでしょう。
正直わかりません(笑)。当社の場合、という視点でお話をすると、今後も製品を主役に置いてコミュニケーションをしていくという考え方は変わりません。ただ、当社の家電製品のような耐久消費財は、頻繁に買い替える商品でもないですし、買い替え時の検討期間も長い場合があります。事前に試すことが難しいことも多いので、「その商品を買ったら、こんなに快適で便利ですてきな暮らしが待っているんだろうな」と思っていただけるかどうかが重要になります。それをわかりやすくイメージしていただくために、動画という表現方法は積極的に使っていきたいですし、デジタル施策は欠かせません。より疑似体験しやすいテクノロジーとして、VRも面白そうですね。
各企業が僅差な表現で広告を展開していて、違いがよくわかりにくい時に、どこにアイデンティティを見いだすかとなると、クリエイティブ力も重要になってくると思うんです。テレビCMをそのままオンライン動画で流していればよい、という時代ではなくなってきたので、みなさんにも期待しています(笑)。
今回のパナソニックさんのインタビューを通じて、クライアントさんがオンライン動画に何を期待しているかについて、理解を深めることができました。どうしても「つくる」ことに集中してしまいがちな動画ですが、むしろ重要なのは、お客様や生活者の立場になった時に、その動画がどう受け入れられるか? というアウトプットからの逆算の視点なのだと改めて感じました。日々移り変わるデジタル市場だけに、勉強あるのみですね。
次回のテーマは、インフルエンサーとタッグを組む、です。どうぞお楽しみに。