【前回】「あなたは世界が熱狂する「eスポーツ」のポテンシャルを知っているか?【前編】」はこちら
eスポーツのプロプレーヤーの能力は高い
筧:続いては、eスポーツのプロプレーヤーの実態について聞いていきたいと思います。プロeスポーツチームである「デトネーションゲーミング」には、スポンサーがついていますよね?
梅崎:はい、現在12社です。2014年は8社のスポンサーがついていたのですが、スポンサー料は8社で年間100万円程度という状況でした。それが、2015年にメディア露出が増えたこともあり、年間で合計6000万円集まり、今年は約1億円前後の収入が確定しています。
スポンサーからはCMや動画制作の依頼があるのですが、私たちには制作のノウハウがないため外注しています。発注先の制作会社もプロのeスポーツ選手を使ったことがないため、演出方法を毎回、議論しながら進めていますね。
筧:中山さんは、いかがでしょうか。
中山:スロットメーカーの山佐とスポンサー契約を結んでいます。以前契約していた企業ともそうなのですが、試合では社名入りのTシャツを着て宣伝するようにしています。
筧:中山さんは、2015年に格闘ゲームの世界大会「EVOLUTION」で優勝されました。これは米国ラスベガスで行われ、参加人数が1万5000人にもなる大きな大会です。プロゲーマーとして周囲の人から見られることをどんなふうに感じていますか。
中山:僕は世界大会で3回優勝しているのですが、20歳で初めて優勝したときは日本に帰国しても誰からも注目されず、世界一になったことを誇らしいとは思いませんでした。ただ、昨年優勝したときは、家族総出でお祝いしてくれたり、周囲の人たちも連絡をくれたり、注目度が高まる中で、プロゲーマーに対する見方も変わってきたと感じています。
筧:大きな大会で優勝するためには、何が必要でしょうか。
中山:一番大事なことは、自分にプレッシャーをかけないことだと思っています。というのも、一度世界大会で、家族や友人たちからの応援を受けて「絶対に勝たなければ」というプレッシャーを感じてしまい、前日の睡眠が30分ぐらいしかとれずに試合に負けたことがありました。それ以来、どういう考え方をすれば100%の力を出して勝つことができるのか、いろいろ試すようになりました。
そして、たどり着いたのが「ひたすら賞金のことを考える」ということでした(笑)。ゲームを始めた15歳から今まで、ぼくはかなりの金額をゲームに投じてきました。だから絶対に賞金をとって投資した分を回収するぞ、ここで勝てば300万円もらえる、など、ひたすら集中する。それで気持ちはかなり落ち着くようになりました(笑)。
筧:面白いですね(笑)。
続いては、馬場先生に聞きたいのですが、若者がeスポーツに取り組むとどのような効果があるのでしょうか。
馬場:そもそもゲームに取り組む若者のモチベーションは、非常に高いことが分かってきています。高校の歴史の授業にゲームを取り入れる研究を行いました。クラスごとに、「従来の先生による普通の授業」「先生が出した課題をゲームで解決する授業」「歴史のゲームだけを行う授業」と分けて行い、授業後に歴史に関する関心や理解がどれだけ高まり、成績が伸びたのかを調査するというものです。
その結果、歴史に対する関心が最も伸びたのは、「歴史のゲームだけを行う授業」でした。ただし、ゲームだけでは、関心は高まっても、それが問題解決の能力にはつながっていないことも分かりました。最も良い成績を収めたのは、「先生が出した課題をゲームで解決したクラス」でした。残念ながら、「従来の先生による普通の授業」は、逆に歴史に対する関心を下げていました。
筧:ゲームを活用した学習効果は高いのですね。
馬場:「eスポーツのプレーヤー」と「ゲームをほとんどしない一般の人」の運動能力の差を調べた研究結果もあります。調査対象である一般の人の平均年齢は22歳と若く、運動能力は高いのですが、それでも、物事の達成力、障害を乗り越えて目的を遂行する力、思考力、集中力など、全ての項目でeスポーツプレーヤーの方が勝っていました。だから、みんなeスポーツをやってください(笑)。
ただし、この結果からはeスポーツプレーヤーがそうした能力を先天的に持っていたのか、それとも訓練によって獲得したのかは分かりません。この解明が進めば、プレーヤーの育成に大きな成果を得られるようになるでしょう。
とにかくeスポーツのプロプレーヤーの能力はすごく高いのです。