eスポーツを日本に定着させるために必要なこと
筧:藥師神さんが考えるeスポーツの未来はどのようなイメージでしょうか。
藥師神:私自身はゲーマーではありませんが、eスポーツの世界と関わりを持ち、何人かの魅力的な方々に出会いました。特に格闘ゲームのトップ選手たちは、私が普段接しているサッカーやテニスのプロ選手たちにも引けを取らない態度で競技に臨んでいます。また、弁護士としても、新しい業界・市場が生まれていく過程は非常にスリリングで面白いです。法制度と折り合いをつけながら、いろいろとチャレンジして、より社会に浸透した、誰もが自然に受け入れられるような競技シーンが生まれてほしいと思っています。
筧:梅崎さんが、目指している日本のeスポーツはどうでしょうか?
梅崎:まず世界で最も人気が高いタイトルで世界一をとることを目指さなければいけないと思っています。その過程で、若い人がeスポーツのプロゲーマーを目指したくなるような環境を整えていき、日本でも億単位で稼げるプレーヤーをどんどん輩出していきたいですね。
筧:確かに、ラスベガスでは毎月のように世界大会が行われていますし、日本も早くそうした環境にしていきたいですね。馬場先生は「eスポーツ強国」を唱えていますが、いかがでしょうか。
馬場:一言でいうならば、eスポーツを社会に根づいたオフィシャルなスポーツにしていきたいということです。梅崎さんが言うように、世界で活躍できるプレーヤーを輩出していくためには、子どものときからeスポーツに慣れ親しんでもらうなど、プレーヤーの層を厚くしなければいけない。
そうなると、プレーヤーが目標とするような大会が必要です。今年、日本eスポーツ協会が日本選手権を行いましたが、これを目標となるような大会に育ててもらいたいと思っています。今も各地でさまざまな大会が催されてはいますが、ゲームタイトルに、はやり廃りがあることもあって、なかなか長続きしていません。ですから、長く続くように種目や部門、統一されたルールをつくる必要もあるでしょう。
もうひとつ、プロ選手のセカンドキャリアの問題があります。引退した後に、どういうセカンドキャリアをデザインできるか、ということも考える必要があります。
筧:選手のセカンドキャリアがないと、子どもの親御さんも心配ですよね。梅崎さん、どういうセカンドキャリアがあるのでしょうか。
梅崎:プロプレーヤーを引退した後は、専門学校の講師や、日本チームのコーチやマネージャーとして活躍している人もいます。韓国では、賞金で起業した人もいますし、大会での実況や解説などコメンテーターとして活躍する人もいます。今後は、さらにセカンドキャリアの可能性は広がっていくと思います。
中山:そうですね、僕は自分の選手生命は30歳が限界だろうと思っています。将来を考えて、実況や解説のスキルを磨いておこうと、今からそういう仕事に挑戦しています。
筧:本日はありがとうございました。eスポーツが一過性のブームではなく、ずっと継続していくスポーツとなるように、日本eスポーツ協会も支援していきたいと思います。
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馬場章
東京大学大学院情報学環元教授
1958年茨城県生まれ。専門は日本経済史、歴史情報論、コンテンツ創造科学。科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)で「オンラインゲームの教育目的利用のための研究」を推進、また、日本デジタルゲーム学会初代会長として日本のゲーム研究を牽引してきた。現在は、デジタルゲームを中心にエンターテインメント全般を学際的視点から研究。とくに、eスポーツプレーヤーの身体・精神的優位性と教育効果の究明を重視する。メディア掲載・出演など多数。中山隼雄科学技術文化財団理事、科学技術融合振興財団理事、日本eスポーツ協会理事などを務める。過去にはDiGRA2007(The Third International Conference of the Digital Games Research Association)組織委員長、日本賞コンテンツ部門審査委員なども歴任。第1回日本デジタルゲーム学会賞受賞。
梅崎伸幸
株式会社Sun-Gence代表取締役、プロeスポーツチームDetonatioN Gaming CEO、日本プロeスポーツ連盟共同代表理事
1983年福岡県生まれ。大学卒業後に大手電機メーカー企業に就職し、7年間営業職として勤務。入社の5年目に当時のゲームのオリンピックともいえる「World Cyber Games」に出場することを目的としたチーム「DetonatioN」を結成。2015年2月には「DetonatioN FocusMe」という、日本初の給与制・共同生活を行うプロゲーマーチームを開設。
2016年4月には日本初となるeスポーツ教育機関、東京アニメ・声優専門学校e-sportsプロフェッショナルゲーマーワールドコースの講師に就任。日本のeスポーツシーンを牽引するキーマンである。
中山大地
プレーヤーネームはノビ。1991年長野県生まれ。鉄拳インストラクターとしてナムコ巣鴨店で3年間鉄拳の講師として勤務。その後はフリーランスとして活動し、全国の組手イベントなどに参加する。2015年に開催された世界最大規模の格闘ゲーム大会であるEVOLUTION、同年12月には鉄拳20周年特別賞金制大会 THE KING OF IRON FIST TOURNAMENT 2015 GRAND FINAL 鉄拳7 無差別1on1部門優勝と世界大会を2連覇。過去にも世界大会で優勝しており、鉄拳で日本初の世界王者として君臨する。現在は各地で講習会やイベント企画などを通して鉄拳だけではなくゲーム業界を盛り上げていこうと奮闘中。
藥師神豪祐
恵比寿南法律事務所代表弁護士
1984年愛知県生まれ。東京大学経済学部卒業。東京大学法科大学院修了。eスポーツに欠かせない要素である、賞金付きゲーム大会についての法務や、プロゲームチーム・プロゲーマーの顧問業務等などに従事。東京アニメ声優専門学校プロゲーマー専攻講師(マナー・契約概論)。eスポーツ支援のための弁護士団体LNeS(Lawyers Network for eSports)を設立。外資系法律事務所や大型事務所の弁護士と連携し活動中。
筧誠一郎
一般社団法人日本eスポーツ協会事務局長、一般社団法人e-sports 促進機構理事、eスポーツコミュニケーションズ代表
1960年東京生まれ。1983年株式会社電通入社。主に音楽、ゲーム分野の作業に従事。2010年電通退社。eスポーツ関連業務とエンターテインメント系コンサルティングを手掛ける。