オムニコムによるマクドナルドのアカウント奪取から見えてくる「未来のエージェンシー」とは?

3.データドリヴンなクリエイティブプロセス

オムニコムグループがメディアに続いてクリエイティブアカウントを獲得したのは、ただ単にアイデアのインパクトや戦略が優れていたというだけでなく、その運用プロセスに鍵があったと言われています。それはメディア業務でも顕著であったデータの扱い方と、またその結果を活用したクリエイティブのプロセス自体がクリティカルであったということです。

このようなピッチの結果を聞くと、伝統的なエージェンシーがそのサイズに限らず、クリエティブを売り物にしている限りは、一度はクライアントのビジネスを獲得したとしても、継続的に維持していくことが難しくなることが推測できます。

エージェンシー側もデータドリヴンに取り組まない限り、クリエイティブがどのように継続して発展できるサービスなのかを説明できません。その結果、その時に流行っている一流クリエイターに仕事が集中してしまい、リソースをうまく活用できず、さらに競合のピッチを繰り返す羽目に陥らないとも限らないでしょう。

その意味でデジタル化というのはクライアント側のマーケティングやビジネスに限らず、エージェンシーにとってもビジネスモデルのイノベーションを要求していると言えます。

最もデータから遠いと思われてきたクリエイティブのような聖域にもデジタルデータを活用して、よりスピーディに、よりリアルタイムに、よりフレキシブルに、よりパーソナルなクリエイティブが必要なのです。

では、未来のCMOはどうなる?

以上、エージェンシーの未来について考えてきましたが、クライアントサイドのCMO自身もその存在意義を問われるかもしれません。

コンサル会社がマーケティングを領域として取り込むのと同様に、Cレベル(CEO、CFO、COO)のエグゼクティブは専門化よりも統合されるかもしれません。そうなればCIOやCFOがマーケティングの役割を担う可能性も否定できないでしょう。

もしくは未来のCMOは、CEOの優秀なコンシェルジュとなった「AI(人工知能)」かもしれません。それは『アイアンマン』に出てくるAIのJARVIS(ジャービス)のようにマーケティングデータを即座にダッシュボードとしてビジュアライズするだけでなく、シミュレートや実行までのオペレーションをリアルタイムでサポートしてくれるような存在かもしれません。

そのとき、CMOというポジションは本当に残っているでしょうか?

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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