博報堂アイ・スタジオ×TAP PROJECT、CSR活動を通じて新たな表現を切り拓く

世界中の子どもたちが清潔で安全な水を使えるようにするために、ユニセフの活動を支援するプロジェクト「TAP PROJECT」。2007年にニューヨークでスタートし、日本では、2009年より日本ユニセフ協会と博報堂グループ(博報堂・HAKUHODO DESIGN・TBWA\ HAKUHODO・博報堂アイ・スタジオ・博報堂プロダクツ)の有志メンバーが「TAP PROJECT JAPAN」を運営し、飲食店での募金活動や、啓発イベントを行っている。2016年はWebサイトリニューアルや、子どもから大人までが楽しめるスペシャルコンテンツ、また過去最大規模の参加者となったイベントなど幅広い展開で注目を集めた。そこで、今年のプロジェクトで中心的な役割を果たした博報堂アイ・スタジオの3名に企画の狙いから、広告会社グループとしてCSRに取り組む背景までを聞いた。
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左から、統合デジタルマーケティング3部 館由依子氏、統合デジタルマーケティング3部インタラクティブプロデューサー/プラナー 山本恭裕氏、統合デジタルマーケティング2部 アートディレクター 竹尾梓氏。

博報堂グループのCSR活動として参加

—「TAP PROJECT」は、どのようなプロジェクトなのでしょうか。

山本:「TAP PROJECT」は開発途上国に安全な水を提供するためのユニセフの活動を支援するプロジェクトです。世界では清潔ではない水が原因の下痢で脱水症状に陥り、年間30万人近くの5歳未満の子どもが命を落としています。こうした現実を知ってもらい、安全な水を提供するための、さまざまな企画を行っており、今年も「水の日」にあたる8月1日から3カ月間にわたって実施しています。

その中でも中心的な活動が、カフェや飲食店を通じた募金です。各店舗に協力してもらい店内にリーフレットや募金箱などを設置して、無料で出される1杯のお水に対して、お客さんに募金してもらうという企画を行っています。そのほか、イベントやオンライン企画を通じて、広く支援を呼びかけています。

—博報堂アイ・スタジオが、「TAP PROJECT」に参加することになった経緯を教えてください。

デジタルソリューション3部 インタラクティブプロデューサー/プラナー 山本恭裕氏

山本:もともと日本で「TAP PROJECT」が始まったきっかけは、博報堂の社内プロジェクト「hakuhodo+design project」です。これは、デザインで社会的課題の解決に取り組むという企画で、「TAP PROJECT」もHAKUHODO DESIGNの永井一史の呼びかけで始まりました。プロジェクトの運営は日本ユニセフ協会とともに博報堂グル―プの有志メンバーがCSR活動の一環として携わっています。

僕たち博報堂アイ・スタジオはデジタル領域に強みを持つ会社ですので、主にWebサイト周りを中心に貢献し、毎年20名ほどの有志が参加していますね。
 
—CSR活動に20人も関わるのはすごいですね。どういったメンバーが参加しているのでしょうか?

竹尾:当社からは、ディレクターにエンジニア、デザイナー、プロデューサーなどさまざまな職種の人が参加しています。中には、新卒で参加する人もいますよ。

館:私は、新卒で2016年4月に入社したばかりなのですが、今年の「TAP PROJECT」の責任者を務める当社の山本が上司で声をかけてもらったのと、まずは何でも経験したいということで参加しています。

山本:参加する動機も人それぞれですね。大学時代から開発途上国の支援活動に関わっていたという人もいれば、普段の仕事ではできないことに挑戦したいという人もいます。会社からも希望すれば、誰でも参加してよいと言われています。

—今回、博報堂アイ・スタジオは「TAP PROJECT」でどのようなことを行ったのでしょうか。

山本:企画から一貫して参加していますが、まずは、スマートフォン対応のためWebサイトのリニューアルを行いました。ここ数年、スマートフォン対応の必要性には気づいていたのですが、予算の関係もあって、なかなか手が付けられていなかったのです。ただ、スマートフォンからのアクセスはここ数年、飛躍的に伸びていたので、必要性が高まっていると思い、ついに実施しました。

博報堂アイ・スタジオではクリエイティブで世の中を動かしていきたい人を募集しています。興味のある方はこちらからご覧ください。

竹尾:今回のリニューアルで、全体のナビゲーションも分かりやすいデザインに変えています。また、サイトの背景の水面は、訪問直後やサイト内でなんらかのアクションをしていれば綺麗な水色のままなのですが、しばらく放っておくと色が濁ってくる演出にしています。「関心が薄れると水が汚れていく」というイメージをビジュアルで表現しています。

リニューアルした「TAP PROJECT JAPAN」Webサイト。

—Webサイトを通して、支援の輪を広げていくわけですね。今回は、Webサイトのリニューアルに加えて、スペシャルコンテンツ「TAP WATER ADVENTURE」を展開しています。この企画は、どのようなコンセプトだったのでしょうか。

山本:はい、企画会議のときに、海外に比べて日本の募金額が少ない理由を考える機会がありました。そこで出てきた声が、「募金の使用目的が伝わっていないため、実感できていない」というものです。「TAP PROJECT JAPAN」は、きれいで安全な水が身近にある環境にいるわたしたちが、世界の子どもたちが置かれている状況を知り、支援するための取り組みです。自分の募金がどのように現地で活かされるのかをイメージするきっかけ作りとして、日本からマダガスカルに水が届くまでの流れを可視化してみたらどうだろう、と考えました。

そこで、イベントの会場に大きな撥水加工ボードを置き、スタート地点の日本からゴールのマダガスカルへ水を注いで届ける、というシンプルなゲームをつくりました。4000人以上が参加してくれ、過去最高の体験人数となりました。夏休みに行ったこともあり、子どもから外国人のみなさんまですごく楽しんでくれ、SNSに写真を投稿する方も多く見受けられました。

さまざまな国のモニュメントをアクリルのボードで制作した。マダガスカルまで水が届く様子を表現している。

竹尾:さらに、デジタルで「水を届ける体験」価値を最大化するため、スマートフォンのジャイロ機能を活用したスマホゲームを提供しました。水滴が名所を通過する際に画像を自動生成させ、SNSでシェアできる機能も盛り込みました。日本製粉のご協力により、1プレイにつき100円が「TAP PROJECT」を通じてユニセフに寄付され、マダガスカルでユニセフが実施する水と衛生の事業に役立てられます(2016年11月3日まで)。

—デジタルに強い博報堂アイ・スタジオがイベントまで実施していることに驚きました。

山本:ありがとうございます。このプロジェクトには博報堂グループの企業から様々なキャリアをもった社員が参加し、チームとして関わっています。最初の企画過程ではデジタルからアナログまで幅広いアイデアが寄せられた中で、今回のアナログなイベント案を選択したのは、シンプルな体験を通して参加者の記憶に残したかったからです。テクノロジーだけを活用すると、どうしても表現が難しくなってしまい、ステップごとの説明が必要になるケースも多い。それでは、企画への思いが伝わりにくいし、コミュニケーションのスピードも落ちてしまいます。

竹尾:博報堂アイ・スタジオは、デジタルマーケティングに強みを持つ企業ではありますが、統合的な体験の提供のために必要であれば、デジタルという領域に留まらず、プロダクトやイベントの企画制作も行います。私自身も、デジタル領域を越えたアウトプットを生み出すことは貴重な経験になりました。

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