写真や映像の表現を専門にするアスカネットが開発した「エアリアルイメージングプレート(AIプレート)」は、これまでにない方法で空中に映像を結像させることに成功した。この近未来的な新技術は広告やプロモーションのあり方を変える可能性を持っている。そこで、アスカネットの代表取締役社長兼CEOの福田幸雄氏に詳しく話を伺った。
SF映画の世界が実現された
—“もう一つのAI”として開発された「エアリアルイメージングプレート(AIプレート)」は、何もない空中に映像を映し出すことができる新技術と伺っています。近未来的のSF映画をイメージしてしまうのですが、これはどのような特徴を持った製品なのでしょうか。
簡単に言うと、スクリーンが存在しない空中に映像を映し出すことができる製品です。類似の技術にホログラムがありますが、これは大変高額な設備でレーザー光を照射する必要がある上、結像できる映像も限られているのが現状です。
一方で、「エアリアルイメージングプレート」はレーザーやプロジェクターで映像を照射するのではなく、「受動式」という方法を用います。これは物体からの反射光をAIプレートに通すことで物体の反対側に画像が戻り、再度結像するというものです。そこで、iPadやディスプレイなどのモニターに映し出した映像を「エアリアルイメージングプレート(AIプレート)」を通すことで、簡単に空中に浮かべることができます。また、コップなどの実物も反射光により3次元で空中に結像します。
—-どういった経緯で「エアリアルイメージングプレート(AIプレート)」を開発したのでしょうか。
当社はもともとデジタル写真の加工やフォトブック制作など画像や映像に関するビジネスを行ってきた会社です。競合各社も同様のビジネスを始める中で、差別化を図るべく新技術を模索していました。そんな折、2010年に画像を空中で結像させる特許技術を持つ方と知り合いになりました。当初はビジネス化できる段階ではありませんでしたが、この技術をどうにか生かせないだろうかと考えたのが始まりです。
開発者に聞くと、この現象はたまたまパソコン上でシミュレーションをしていた際、「もしかして、こう反射させたら空中結像するのではないか?」と発見したようです。研究者の間では常識的には考えられない反射方法のため、今まで誰も気づかなかったと聞いています。
—ビジネスとしては未知数ながら、大きな可能性を感じたと。製品化までにはどれぐらい年月がかかりましたか?
2013年のシーテック・ジャパン出展時に「実用レベルまでいけるかもしれない」という手応えを得ましたので、製品化までは3年掛かったと言えるでしょう。この技術は、今も発展中ですので、研究を重ねるほど性能は上がりますし、いまは大型化を視野に入れています。
—具体的には、どのような場面で活かせる技術なのでしょうか?
現在、主に二つの用途を考えています。一つ目は「デジタルサイネージの空中化」です。これはモニター映像を物理的なディスプレイから外してしまおう、というものです。デジタルサイネージの利点はアイキャッチ効果ですよね。それなら、映像が宙に浮かんでいた方がより多くの関心を集め、より多くの感動を与えることができるはずです。
もう一つは、タッチパネルとしての使用法です。空中映像の利用法として面白いのは、センサーとの融合によるインタラクティブ化です。センサーの技術を活用することで、空中映像に手をかざすと、タッチパネルのように操作ができるのです。そこで、タッチパネルに「触りたい時けど、触れない」という場面での活用を考えています。たとえば、医者が手術中に血のついた手袋をはめている時や、技術者の両手が機械油で汚れている時にモニターや機械に触れたいといった場面、またATMのように不特定多数の方が触るものにはクリーンな操作が可能になるでしょう。こういった使用用途は、世界規模で見れば膨大なものになるはずです。
──デジタルサイネージの目的は見る人に記憶してもらったり、認知してもらったりすることですから、インパクトは絶大ですね。そのほかにも、さまざまな広告やプロモーションで活用できそうです。
そうですね、たとえばオフィスに入ると会社のロゴマークが空中にゆっくりと回っていて、それを触るとAI(人工知能)の受付嬢が空中に出てきて会話できるといったことを実現すれば、大きな話題となるでしょう。アパレルブランドであれば、ファッションショーを空中の映像に映すといったプロモーションも考えられますね。
実際に、ある化粧品メーカーでは、店舗内のモニュメントとして宙に浮いた企業ロゴである花が徐々に開いていくという演出をしました。また、青山にあるデザイン雑貨のカッシーナでは、クリスマスの雪景色の中に手をかざすと雪が降ってくるという幻想的な演出をしました
実用的な面では、旅行会社からのお話も多いですね。大手旅行会社の事例では、宙に浮いた巨大な地球儀を空中に回し、行きたい場所をクリックするとその情報が現れるといったものをつくりました。こちらは、ITやエレクトロニクスのイベント「CEATEC JAPAN」で展示したところ多くの人を集めることができました。また、旅行代理店の店舗では実際に活用されています。
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